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交通事故で整骨院に頻繁に通うことをおすすめできない理由

2019.05.13

はじめに

 交通事故で頚椎捻挫(むちうち)や腰椎捻挫・打撲などの受傷があった場合に,整骨院での施術を受けることを希望する方が相当程度いらっしゃいます。

 整骨院の看板や広告を見ると,交通事故対応をアピールしているところは少なくありません。

 整形外科にあまり通わず,整骨院メインで通っていた方にその理由を聞いたところ,整形外科での治療を受けても,あまり何かしてもらっているように思えず,柔道整復師のマッサージ等を受ける方が,症状が改善しているように感じるという話がありました。

 その他には,整形外科と異なり,土日や比較的遅くまで営業しているところもあり,会社に行きながらでも通いやすいことを整骨院へ通う理由に上げる方もおられます。

 しかし,交通事故の賠償実務から考えると,整骨院(や接骨院)へ通うことにはリスクがあります。

施術費が交通事故の損害として認められないリスクがあります

 加害者が任意保険に加入していた場合,被害者の過失の割合が大きい等,一部の場合を除き,一般的には,加害者が加入する保険会社から医療機関等へ直接費用が支払われる,いわゆる「一括払」「一括対応」のサービスが取られています(任意保険会社が行う「一括払」の意味については,コラム「治療中に任意保険会社が医療機関に直接支払いをするのは義務ではない?」を参照下さい)。

 整骨院の施術についても,自賠責保険が支払いを認めているために一括払をするケースが多く見られ,自賠責保険が医師の指示や同意を施術費用の支払い要件として求めていないことから,医師の指示や同意がなくても,被害者の希望だけで一括払をすることも少なくありません。

 しかしながら,保険会社が被害者の希望にしたがって整骨院へ施術費用の一括払サービスをおこなっていても,あくまで仮払いのサービスにすぎませんので,後日に整骨院の施術費用を争われる可能性があります。

 当職の経験から言うと,示談交渉段階の場合は,施術費用がそう高額でなく,一定程度整形外科にも通っていれば,既払いの施術費用の額が争われる可能性は高くないと思いますが,訴訟に移行すればまず争われると考えておいた方が良いと思います。

 そして,裁判実務においては,①施術の必要性②施術の有効性③施術内容の合理性④施術期間の相当性⑤施術費の相当性,の各要件を満たすことが求められていますが,これらの要件を満たしていることを立証するのは容易ではありません(各要件の詳細については,「Q接骨院に通いたいのですが、施術費用は支払われるのでしょうか?」を参照下さい)。

 主治医の指示があり,立証においてその協力が得られれば,①施術の必要性や②施術の有効性の要件をクリアできそうですが,整形外科医が整骨院の施術を受けることを指示するケース自体が珍しいと思われます。

 むしろ,争いになって主治医に意見を求めても「有効性は不明」などと回答される可能性も高く,そもそも整骨院の施術を受けることが治療の上でマイナスになると考えている整形外科医の先生もいらっしゃいます。相談を受けた方の中には,主治医が整骨院に通うことを嫌っているため,保険会社の一括払を受けながら,主治医に内緒で整骨院に通っていたというケースもありました。

 主治医に希望を伝え,なんとか同意なら得られそうという場合にも,その意味合いには注意が必要です。同意の意味が,「有効性は不明だけれど,希望するなら行ってもかまいません」という程度であれば,①施術の必要性や②施術の有効性の要件をクリアしたことにはならないでしょう。

 カルテや診断書に同意の記載があっても,保険会社から同意の意味について医療照会がなされた結果,同意した理由が単に「患者が希望したため」で,「施術の有効性は不明」という回答だった場合,目も当てられません。

 理論上は,主治医の指示がなくても,施術の必要性や有効性を含む諸要件を満たすことを立証できれば損害として認められることになりますが,主治医の指示がなく,協力も得られない場合に,自力で立証できるかは怪しいところです。

 交通事故の損害賠償実務では,整骨院の通院期間も入通院慰謝料の算定基礎となっていますが,整形外科の通院後も整骨院に通っているようなケースでは,整骨院の施術費用が否定されれば,入通院慰謝料の算定基礎となる入通院期間も整形外科の最後の通院までしか考慮されなくなります。

 例えば,示談交渉段階で整骨院の施術を保険会社が認めているケースで訴訟に踏み切り,施術費用が否定されたような場合には,既払いの施術費用の返還を請求されるだけでなく,入通院慰謝料も減額され示談段階以下になってしまいます。

 当職が原告代理人となって担当した事件ではありませんが,示談交渉段階でいわゆる赤い本基準の満額提示があったにもかかわらず,なぜか原告が訴訟提起した結果,訴訟段階で施術費が争われ,裁判所から示談交渉段階を下回る和解案が提示されたケースを知っています。

 訴訟提起が原告代理人のアドバイスによるものなら弁護過誤を問われかねないところです。

 その事件は結局,原告代理人が被告側に示談交渉段階の提示額で和解したいと泣きつき,控訴を嫌った被告側(保険会社)がそれに応じて和解で終結しましたが,このように,示談交渉段階で争われていなくても,訴訟に移行すれば施術費用を争われるリスクがあることは理解しておく必要があります。

整骨院メインでは後遺障害等級認定は期待できません

 MRIで神経根圧迫の異常が確認できるなどの有益な他覚所見があるようなら,医学的に証明あるいは説明できる場合にあたるとして,入通院期間の長さや頻度はさほど重要ではないかもしれません。

 しかし,頚椎捻挫・むちうち,腰椎捻挫におけるほとんどの事例では,神経根圧迫等の画像所見がなく,もっぱら「医学的に説明」可能なレベルを求める「局部に神経症状を残すもの(14級9号)」の等級認定が問題となっています。

 損害保険料算出機構の内部基準は一般公開されていませんので,経験則にもとづく推測にはなりますが,神経症状14級9号の場合,6ヶ月間に100日くらい通院をすることが認定の上でプラス評価される一つの目安になっているように思われます(むち打ち損傷の後遺障害等級認定のポイントについては,「後遺障害の等級認定」を参照下さい)。

 そして,整骨院で行われるのは,「治療」ではなく,「施術」にすぎないとして,後遺障害等級認定において治療実績として評価されていません。

 具体的には,いくら整骨院に通っても,目安となる通院実績には,ほぼカウントされないと考えて下さい。

 整骨院メインで通っている方の場合,あわせて整形外科にも頻繁に通っていることはまずないため,整形外科の通院実績が乏しく,14級9号の等級認定が期待できないケースがほとんどだと思われます。

交通事故で整骨院に頻繁に通うことをおすすめできない理由

 14級9号の後遺障害が認定されれば,後遺障害慰謝料として赤い本基準で110万円の獲得が期待できるほか,労働能力喪失率5%,5年間の後遺障害逸失利益が認められているのが実務の相場です。

 同じむち打ち損傷でも,14級9号が認定されるかどうかで,150~200万円程度は賠償額が変わってきます。

 交通事故に遭って整骨院へ頻繁に通う場合,施術費が認められないリスクがあることや,整骨院への通院が後遺障害等級認定の上で評価されないことを十分に理解しておく必要があります。

 以上のとおり,交通事故の損害賠償請求の面からするとリスクが高いため,交通事故の受傷で整骨院に頻繁に通うのはおすすめできないというのが正直なところです。

 それでも,どうしても整骨院へ行きたいという場合,施術費用が争われた場合のリスクを減らすために,健康保険を使用した方が安全でしょう。

 自由診療で施術費が高額になって自賠責保険の120万の枠を超えれば,保険会社が自腹で施術費用の支払いをしなければならなくなるため,施術費用が争われる可能性が高まります。

 また,訴訟で施術費用が否定された場合であっても,健康保険を使用していれば,自己負担部分が30%となるだけでなく,保険診療は1点10円と自由診療と比べると単価が安いので負担は少なくて済みます。

 とはいえ,同じ原因での通院の場合,整形外科と整骨院の両方で健康保険を使用することはできませんので,既に整形外科で健康保険を使用していた場合には,整骨院では使用できません。

 そして,整形外科と整骨院とどちらで健康保険を使用すべきかについても,過失割合に争いがある重大事故の場合には,高額な医療費の自己負担部分を軽減するために整形外科で健康保険を使用した方が経済的に有利な場合もあります。

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