過失割合・過失相殺とは?

過失相殺・過失割合

 交通事故では,程度の差はあるものの,被害者にも「過失」,つまり落ち度があるケースが少なくありません。

 民法722条2項は,「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と定めています。

 損害の発生や拡大に被害者の過失が寄与している場合に,民法722条2項に基づいて損害賠償額の減額を行うことを「過失相殺」といいます。

 交通事故の当事者である加害者・被害者に,事故の原因となったか過失がお互いどの程度あったのかを示すための割合を「過失割合」といい,過失割合に応じて,加害者が被害者に対して支払う損害賠償額が減額されることになります。

別冊判例タイムズ38号の基準

 過失には,運転上のミスや不注意というだけではなく,道路交通法に規定されている規定を遵守しなかった場合や,非常識な危険な運転をしたような場合や,適切な事故回避行動をしなかったと判断されるような場合も含まれます。
 過失割合については,「東京地裁民事交通訴訟研究会編 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版(別冊判例タイムズ38号)」において,「自動車対自動車」,「自動車対歩行者」,「追突事故」,「出会頭の事故」,等,交通事故の態様や類型によって,それぞれ「20:80」「50:50」などと具体的な基準が定められています。

 裁判実務では,大量の同種案件を公平かつ迅速に処理するために,東京地裁民事交通訴訟研究会編 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版(別冊判例タイムズ38号)の基準に依拠して過失割合が認定されています。

 従って,交通事故で一方的に被害を受けたような場合であっても,事故の状況によっては被害者にも過失があると認定され,損害賠償金額が減額される可能性があります。

過失割合で争う場合

 よく「保険会社が過失割合を決めてしまったが納得できない」という話を聞きますが,話し合いの段階では,被害者と加害者との間で合意が成立して初めて過失割合が決まりますので,保険会社が独断で過失割合を決めるわけではありません。
 保険会社が提示する過失割合は,保険会社側の見解に過ぎないのです。保険会社の見解に納得がいかない場合に,勝手に過失割合が決まることはありません。
 当事者間で合意が成立しない場合,最終的には訴訟で決着をつけることになります。

 訴訟においては,証拠と当事者の主張にもとづいて,裁判所が過失割合を判断することになります。

実況見分調書

 人身事故が発生した際には,警察によって事故状況をまとめた実況見分調書と呼ばれる書面が作成されます。なお,物損事故の場合には実況見分調書は作成されず,物件事故報告書という簡易な書面のみが作成されます。

 実況見分調書の事故現場見取図には,事故車両の進路,最初に相手を発見した地点,ブレーキを踏んだ地点,相手と接触した地点,危険を感じた地点,ハンドルを切った地点なども記載されており,交通事故の過失割合を判断する上で重要な証拠となります。

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