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後遺障害の逸失利益

2018.05.13

後遺障害の逸失利益とは?

 後遺障害逸失利益とは,交通事故によって後遺障害(いわゆる後遺症)が生じなければ得られたはずの利益のことを言います。

 別の言い方をすれば,交通事故によって後遺障害が残ったことにより労働能力が低下し,本来得られたはずの収入が減少することによって生じる損害のことをいいます。
 そして,この後遺障害逸失利益は,基本的には以下のような計算式で算定されています。

【後遺障害逸失利益】
=【基礎収入】×【労働能力喪失率】×【労働能力喪失期間の年数に対応する中間利息控除に関するライプニッツ係数】

用語説明

 では,それぞれの用語の意味をみていきます。

基礎収入とは?

 ここでいう基礎収入とは,逸失利益を算定する際に基礎となる収入のことを言います。

 裁判実務では,以下の表のような判断枠組みが参考にされています(①日弁連交通事故相談センター「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」),②東京地裁・名古屋地裁・大阪地裁による「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言(以下,「三庁共同提言」といいます)(判例タイムズ1014号)」より引用)。

 もっとも,これらは目安ですので,個別の事情によって異なる場合があることには注意が必要です。

種類 原則 例外
給与所得者 事故前の現実の収入額(①) 若年者(概ね30歳未満)の場合には,生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合に全年齢平均賃金額(男女別・学歴計・全年齢平均賃金額)(①)
事業所得者 申告所得額(①) 若年者(概ね30歳未満)の場合には,生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合に全年齢平均賃金額(男女別・学歴計・全年齢平均賃金額)(②)
家事従事者 専業主婦 女性労働者の全年齢平均賃金額(①) 生涯を通じて女性労働者の全年齢平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性が認められない場合に減額(②)
有職者 実収入額が女性労働者の全年齢平均賃金額を上回る場合に,実収入額(①) 実収入額が女性労働者の全年齢平均賃金額を下回る場合に,専業主婦と同様の処理(①)
無職者 学生等 全年齢平均賃金額(男女別・学歴計・全年齢平均賃金額)(①) 生涯を通じて全年齢平均賃金額(男女別・学歴計・全年齢平均賃金額)を得られる蓋然性が認められない場合に減額(②)
高齢者 労働能力・労働意欲があり,就労の蓋然性がある場合に年齢別平均賃金額(男女別・学歴計・年齢別平均賃金額)(①)  
失業者 労働能力及び労働意欲があり,再就職の蓋然性がある場合,原則として,再就職によって得られるであろう収入額(①) 若年者(概ね30歳未満)の場合には,生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合に全年齢平均賃金額(男女別・学歴計・全年齢平均賃金額)(②)

労働能力喪失率とは?

 労働能力喪失率とは,後遺障害により被害者の労働能力がどの程度低下したかを表す指標です。

 一般に,労働能力喪失率は,認定された後遺障害の等級に従い,自賠法施行令別表の後遺障害別等級表の労働能力喪失率を適用して判断されています。

1級 2級 3級 4級 5級 6級 7級
100% 100% 100% 92% 79% 67% 56%
8級 9級 10級 11級 12級 13級 14級
45% 35% 27% 20% 14% 9% 5%

 この労働能力喪失率は,自賠責保険において,画一性・公平性を保つ趣旨から決められた参考基準です。

 裁判所の判断を拘束するものではありませんので,被害者の年齢,職業,性別,後遺障害の内容・部位・程度,事故前後の就労状況や減収の程度等を総合的に考慮して,等級表の喪失率と異なる認定がなされることもあります。

 例えば,鎖骨や骨盤骨などの変形障害,軽度の歯牙障害,醜状障害等は,労働能力喪失への影響の有無が争いになり,等級表と異なる認定がなされることが多い後遺障害の類型です。

 とはいえ,自賠責保険の後遺障害認定手続きにおける判断がなされている場合には,特段の事情がない限り,認定された後遺障害に対応した労働能力の喪失について一応の立証がなされたものとされ,これを超える労働能力喪失率を主張する場合には被害者が,これを下回る労働能力喪失率を主張する場合には加害者が,それぞれ主張に沿った立証を行う必要があるとされています(佐久間邦夫=八木洋一編「リーガル・プログレッシブ・シリーズ5 交通損害関係訴訟[補訂版](青林書院2013年)」154頁)

労働能力喪失期間とは?

 労働能力喪失期間とは,交通事故が原因で生じた後遺障害の影響により,労働能力を失うとされる期間のことを言います。
 労働能力喪失期間は,いつまでも認められるというものではなく,原則的には,症状固定時から一般的な就労可能年数とされる67歳までとされています。
 被害者が高齢者の場合は,「67歳までの期間」と「平均余命の2分の1」のいずれか長い方を労働能力喪失期間として採用することを原則としつつ,具体的な職業の内容や健康状態等も考慮して判断されています。

 未就労者の就労の始期は原則として18歳とされていますが,例えば被害者が大学生である場合には大学卒業予定時を始期として算定されています。

 また,いわゆるむち打ち症の場合には,労働能力喪失期間が制限される傾向にあります。

 例えば,赤い本の基準では12級13号の場合に10年,14級9号の場合に5年が目安とされ,大阪地裁の基準では,12級13号の場合に5~10年,14級9号の場合に3~5年が一応の目安とされています(交通損害賠償額算定のしおり20訂版8頁)。

ライプニッツ係数とは?

 ライプニッツ係数とは,逸失利益を算定する際に,中間利息を控除する計算のために使用する数値です。

 後遺障害逸失利益は,現在から将来に渡って発生する損害ですので,理論的には損害が発生したときに支払うべきだと考えることもできます。

 とはいえ,日本の法制度においては,損害賠償は一時金(一括)での支払いが原則です。

 このため,被害者は一時金で受け取る将来利益分を運用することにより,本来得られないはずの利益をあげることが可能になります。しかし,これでは被害者に過大な利益を与えることになり,当事者間の公平に反するおそれがあります。

 そこで,逸失利益を算定する際には,将来にわたって発生するはずの利息分(中間利息)を差し引いて賠償額を計算する扱いが取られています。

 2020年3月31日までに発生した事故については,現在の実務では,三庁共同提言に基づき,複利方式で利率を5%(法定利率)として算出されたライプニッツ係数が算定方法として採用されています。

 なお,低金利の時代に法定利息の5%での運用を仮定するのは現実的でないという論争もありましたが,判例(最三小判平成17年6月14日民集59巻5号983頁)が「被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率によらなければならない」と結論を出したことで,中間利息の利率の問題は決着がついています。

 また,2020年4月1日に施行される改正民法により,同日以降に発生した交通事故については,年3%の法定利率が適用されることになります(コラム「改正民法の解説① 法定利率の変更」)。

最三小判平成17年6月14日民集59巻5号983頁


損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するについても、法的安定及び統一的処理が必要とされるのであるから、民法は、民事法定利率により中間利息を控除することを予定しているものと考えられる。このように考えることによって、事案ごとに、また、裁判官ごとに中間利息の控除割合についての判断が区々に分かれることを防ぎ、被害者相互間の公平の確保、損害額の予測可能性による紛争の予防も図ることができる。上記の諸点に照らすと、損害賠償額の算定に当たり、被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率によらなければならないというべきである。


具体的計算例

 例えば,2020年3月31日までに発生した事故について,年100万円の収入を得ていた被害者の労働能力喪失期間を10年と仮定すると,単純に計算すれば100万円×10年分として1,000万円となりますが,このままですと将来の利息分を含んでいますので受け取りすぎる計算になります。

 そこで,年100万円の収入に10を乗じるのではなく,中間利息控除に関するライプニッツ係数の7.7722を乗じて計算します。そうすると,現在受け取ることができる金額は777万2,200円になります。仮にこの金額を年5%の複利で運用したとすると,10年後に1,000万円となる計算です。
 なお,ライプニッツ係数を算出するにはかなり複雑な計算が必要となることから,実務上は労働喪失期間に応じた係数の早見表が利用されています。

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