改正民法の解説① 法定利率の変更

 平成29年(2017年)6月に公布された改正民法が令和2年(2020年)4月1日に施行されます。

法定利率の変更

 改正民法では法定利息が現行の年5%(現行民法404条)から当面の間年3%(改正民法404条2項)へ引き下げられることとなっています(改正民法では3年ごとに利率が見直されます)。

 交通事故の損害賠償実務への影響に関しては、遅延損害金の利率が年5%から年3%へ引き下げられるほか、逸失利益の算定にあたって控除される中間利息の計算方法が変わってきます。

 現在の裁判実務では、後遺障害の逸失利益を計算する際、「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する民事法定利率(年5%)のライプニッツ係数」という計算方法を採用しています(中間利息やライプニッツ係数の意味などについては、「後遺障害の逸失利益」の解説を参照ください)。

 改正民法施行後は、計算式中の民事法定利率(年5%)のライプニッツ係数が年3%の利率に対応するライプニッツ係数に置き換えられることになります。

計算例

 具体的に計算してみましょう。例えば、基礎収入400万円、労働能力喪失率20%、労働能力喪失期間20年の方の後遺障害逸失利益は、現行民法のもとでは、労働能力喪失期間20年に対応する年利5%のライプニッツ係数がおよそ12.4622ですので、「4,000,000×0.2×12.4622=9,969,760(円)」になります。

 一方、改正民法のもとでは、労働能力喪失期間20年に対応する年利3%のライプニッツ係数がおよそ14.8774ですので、「4,000,000×0.2×14.8774=11,901,920(円)」となります。

 このように、改正民法適用後は控除される中間利息が減った結果、逸失利益の賠償額が増える見込みです。

改正民法の適用時期

 なお、遅延損害金は遅滞日である不法行為日(事故日)の法定利率が基準となり(改正民法419条1項)、中間利息控除も同様に損害賠償請求権発生日(事故日)が基準となります(改正民法417条の2、722条1項)。

 したがって、遅延損害金や中間利息の計算において改正民法の3%の法定利率が適用されるのは、改正民法施行後に発生した事故に限られることになります。

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