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車両保険金がまず自己過失分に充当され,自己過失分を上回る部分に保険代位が生ずると判断された事例

2019.08.18

大阪地判平成26年8月26日交通事故民事裁判例集47巻4号1031頁

争点

 車両保険金を支払った保険会社の代位の範囲が争点となりました。

判決文抜粋


(1) 原告側の請求
ア 修理費用 66万0000円
     争いはない。
イ 評価損  13万2000円
     上記のとおり。
ウ 文書料     5300円
     甲8より認められる。なお,本件の審理に有用な資料の取り付けのための費用であり,相当因果関係も認められる。
エ 子供の治療費   500円
     上記のとおり。
オ 小計        79万7800円
カ 過失相殺50% - 39万8900円
キ 過失相殺後小計   39万8900円
(2) 原告側の保険代位
ア 原告側保険会社は,車両保険金として56万円を支払っているところ,原告は車両保険金の性質として評価損を填補しない旨主張している。そして,車両保険金の計算方法として,修理費用66万円から免責金額10万円を差し引く形で算出されていることに照らすと,車両保険金の代位処理は修理費用の枠内で行われるべきものである(車両保険金が子供の治療費を填補しないことは当然である。)。具体的には,保険法25条に照らし,車両保険金を修理費用の原告側過失部分(33万円)にまず充当し,残額23万円について,修理費用の被告側過失部分に充当し,この部分について保険代位が生じるとするのが相当である。
イ したがって,原告側保険会社が保険代位する金額は修理費用のうち23万円であり,その余については保険代位は生じない。そうすると,上記原告側損害額のうち,23万円については原告側保険会社が請求権を有し,残額16万8900円については,◯が請求権を有する。


解説

 人身傷害保険金については,判例(最一小判平成24年2月20日民集66巻2号742頁)は,「保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する」とし,人身傷害保険金がまず自己過失分に充当され,自己過失分を上回る部分について人傷社が代位取得することを明らかにしています。

 免責金額が設定されている場合,車両保険を使用してもその分は填補されないため,加害者に請求することになります。

 その場合に,免責金額から過失相殺を行うのか,それとも人身傷害保険金と同様に,車両保険金がまず自己過失分に充当され,自己過失分を上回る部分について保険会社が代位取得することになるのかが問題となります。

 本判決は,車両保険について,人身傷害保険金と同様に,車両保険金がまず自己過失分に充当され,自己過失分を上回る部分に保険代位が生ずると判断しました。

 判決で原告が請求権を有するとされている残額16万8900円の内訳は,修理費用10万円,評価損66,000円,文書料2,650円,子供の治療費250円です。

 車両保険金を人身傷害保険と同様に自己過失分から充当したことにより,車両の修理費に関して車両保険に10万円の免責金額が設定されているにもかかわらず,被害者は車両保険から56万円の支払いを受け,加害者から10万円の賠償を受けることで,修理費用66万円全額を回収しています。

 保険実務では,車両保険の免責金額を0円にするかどうかで保険料に違いがありますが,人身傷害保険と同様に自己過失分からまず充当する方法をとる場合,本判決のように免責金額の有無で違いが生じないことがあります。

 なお,大阪地裁では,車両保険金について自己過失分を上回る部分について保険代位が生ずると判断された判決がその後いくつも出ていますので(大阪地判平成29年3月24日(平成28年(ワ)第4842号、平成28年(ワ)第9546号),大阪地判平成30年10月18日(平成30年(ワ)第82号、平成30年(ワ)第3538号)など),本判決の車両保険の扱いは大阪地裁における一般的な運用だと思われます。

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