大阪地判平成30年12月21日(平成28年(ワ)第12442号)
争点
休業損害の算定方法が争点となりました。
判決文抜粋
(原告の主張)
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(ウ) 休業損害 101万3233円
a 原告は,本件事故当時,◯の自動車整備士兼店舗の販売担当の従業員であった。
b 休業期間は,平成25年5月20日から同年9月20日までの69日間であり,別途,有給休暇を8日取得したから,実質的な欠勤期間は77日である。
本件事故により,平成25年7月16日から同年9月15日まで,給与は全額支給されなかった。
また,冬季賞与も,本件事故による欠勤を理由に全額支給されなかった。
本件事故による休業損害は,本件事故発生の年の前年である平成24年の給与合計347万4333円から,本件事故発生の年である平成25年の給与合計246万1100円を控除した101万3233円となる。
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(被告の主張)
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(ウ) 休業損害 46万4205円
a 基礎日額 8582円(本件事故前3か月の支給金額÷90日)
b 休業日数 73日(平成25年5月20日から同年9月15日まで)
c 20万6781円の一部支給があるほか,平成25年9月16日から同月20日までの間に,4万4500円の減給がある。
d 小括
8582円×73日-20万6781円+4万4500円=46万4205円
e 原告が主張するように,事故前年総収入と,事故年総収入との差額が,当然に休業損害額となるわけではない。年度により,勤務時間等の変動,会社の業績等,休業以外の収入の変動要素があるからである。
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第3 争点に対する判断
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ウ 休業損害 70万5105円
(ア) 基礎日額 1万1882円
(54万0600円(本給)+23万1788円(付加給))÷65日(稼働日数)=1万1882円(1円未満切捨て)
(イ) 休業日数(有給休暇を含む。) 73日(平成25年5月20日から同年9月15日までの勤務日に関して)
(ウ) 原告は,上記休業期間に関して,20万6781円の給与の支給を受けた。また,原告は,平成25年9月16日から同月20日までの間に,4万4500円の減給を受けた。
(エ) 小括
1万1882円×73日-20万6781円+4万4500円=70万5105円
(オ) 原告は,事故前年総収入と,事故年総収入との差額が休業損害の額になると主張しているが,収入の増減は,本件事故の受傷による休業のみに影響されるわけではないから,上記主張は採用できない。なお,原告勤務先の取締役本部長の陳述書や,同人から原告訴訟代理人弁護士宛てのメールには,冬季賞与が不支給になったとする記載があるが,これらでは,本件事故の受傷による休業で,冬季賞与が不支給になったと認めるには足りず,その他,(エ)の金額以上の休業損害が発生していると認めるに足りる証拠はない。
解説
給与所得者の休業損害に関しては,事故前3ヶ月収入を90日で割って日額を算出し,それに休業日数を乗じて算定するのが損保会社における一般的な損害算定方法です。
しかし,月収に休日分の給与額が反映されていないにもかかわらず,日額給与額を計算する際に,月収を休日が含まれた歴日数で割る計算方法をとるのが果たして妥当かという問題があります。
給与所得者の休業損害の日額算定方法については,武富一晃裁判官の講演録「給与所得者の休業損害を算定する上での問題点(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称「赤い本」)平成30年度版下巻)」でも取り上げられましたが,継続しての完全休業ではなく,就労しながら一定頻度で通院を行っている場合で,事故前の具体的な稼働日数,支払いを受けた給与の金額を証拠上認定できる場合には,休日を含まない実労働日1日あたりの平均額を基礎収入とする方法が相当だと指摘されています(同講演録38~39頁)
本判決は,事故前年総収入と事故年総収入との差額を休業損害とする原告主張と,事故前3ヶ月収入を90日で割った基礎日額8582円をもとに休業損害を算定した被告主張の両方の主張を採用せず,事故前3ヶ月収入を実稼働日で割った基礎日額1万1882円をもとに休業損害を算定しました。
本判決は,大阪地裁における給与所得者の基礎日額算定方法に関する資料の一つとして参考になると思われます。