突然の交通事故で家族を亡くす悲しみは、想像を絶するものでしょう。
遺族の苦痛を和らげることはできないかもしれませんが、死亡事故に遭ってしまった場合に相手方へ慰謝料を請求することは当然の権利です。
遺族が請求できる賠償金には葬儀費用や慰謝料、逸失利益があります。それらの相場は、被害者が主な生計者かどうかといった立場の違いや老人や子どもといった年齢の違いにより、差があります。
ここでは、高齢者や子どもを含めた死亡事故の慰謝料の相場について、わかりやすく解説します。
死亡事故で請求することができる賠償金の内訳
賠償金として請求が可能なものは以下のように分類できます。
治療費・入院雑費・付添看護費・休業損害
事故に遭ってから死亡するまでに入院や通院、休業が必要だった場合に認められます。
葬祭費用
戒名・読経料、葬儀社への支払、仏壇購入やお墓建立料(一定の制限あり)です。
死亡慰謝料
死亡した本人の精神的苦痛に対する慰謝料のほか、本人を亡くした遺族としての精神的苦痛に対する慰謝料(遺族固有の慰謝料といいます)もあります。
死亡逸失利益
被害者が死亡しなかったら得られたであろう経済的利益のことです。
死亡慰謝料は精神的苦痛に対するものであり、逸失利益はそれと別個に請求できます。
死亡逸失利益は以下の式で求められます。
大雑把に言えば、「生前の基礎収入が就労可能年齢まで得られた場合の合計金額から生活費相当分を差し引き、その金額を現在一括で受け取ったとみなすために補正して得られた金額」ということです。
基礎収入額は職業や年齢、実収入によって変動します。生活費控除率(収入総額から生活費として差し引く割合)は、被害者の立場(一家の支柱かそうでないか等)によって変動します。
死亡慰謝料の相場
慰謝料には、弁護士(裁判所)基準・任意保険基準・自賠責基準の3種類の基準があり、もっとも高くなっているのは裁判を前提とした弁護士(裁判所)基準です。
被害者自身の慰謝料、遺族としての慰謝料の相場を3つの基準ごとに示します。
被害者本人の慰謝料
金額 | |
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一家の支柱 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 2500万円 |
その他 | 2000万~2500万円 |
一家の支柱とは一般的に父、夫のことですが、経済的な支柱が母や妻であれば「一家の支柱」として認定が可能です。
母親についても、実質祖母や姉が養育していれば「母親」と認定できます。
その他とは、独身の大人、子ども、高齢者が該当します(高齢者、子どもについては以下で解説します)。
金額 | |
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死亡した本人分 | 350万円 |
金額 | |
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死亡した本人分 | 400万円 |
高齢者の場合
被害者が高齢者の場合であっても、死亡慰謝料は一般の独身の大人と同程度となっています。生命を奪われたことに対する精神的苦痛には、年齢は関係ないとされているためです。
一方、死亡逸失利益の額には、高齢であることが反映されます。
子どもの場合
被害者が子どもの場合、子ども自身はまだ一家の支柱でないことから一般の独身の大人と同程度とされています。
しかし、被害者が幼児であったり一人っ子であったりする場合は、両親の精神的苦痛の大きさを考慮し増額されることがあります。
遺族固有の慰謝料
弁護士基準、任意保険基準では、遺族固有の慰謝料は上記本人の慰謝料に含まれているとされています。
自賠責基準では、以下の通り、別個の金額として、相場が示されています。
金額 | |
---|---|
請求権者1人の場合 | 本人分に550万円を加算 |
請求権者2人の場合 | 本人分に650万円を加算 |
請求権者3人以上の場合 | 本人分に750万円を加算 |
本人に被扶養者がいた場合 | 200万円を加算 |
請求権者とは、被害者の父母(養父母も含みます)、配偶者および子(養子、認知をした子、胎児を含みます)です。
死亡慰謝料の増額・減額
実際の事故状況などで、慰謝料が増額したり減額されたりします。
慰謝料の増額理由
- 飲酒運転や速度違反、無免許運転や薬物を使用した状態での運転、信号無視やひき逃げなど、交通事故の内容が悪質だった場合
- 示談交渉時や調停・訴訟時に加害者が供述をころころ変えたり虚偽を述べたりするなど加害者が反省しておらず不誠実である場合
慰謝料の減額理由
被害者にも責任が一定割合あるとされた場合
まとめ
交通事故の被害者が亡くなったときの慰謝料については、被害者の立場や年齢で相場が異なりますが、適正な請求をするためには個々の事情をきちんと主張する必要があります。
交通事故に注力している弁護士であれば、個々の事情を考慮した適切な賠償金の獲得が期待できます。
どうぞ遠慮なく、お気軽にご相談ください。