線条痕の外貌醜状について、瘢痕の形に沿って測定する方法が採用された事例

大阪地判平成10年1月23日交通事故民事裁判例集31巻1号57頁

争点

 外貌醜状の後遺障害12級14号の認定に際し,瘢痕の測定方法が争点になりました。

判決文抜粋


(二) 症状固定

 原告は、平成六年七月八日、○病院において症状固定の診断を受けたが、原告の左眉を上下に跨るようにして、眉毛の脱毛を伴う幅二ミリメートルの斑痕を残した。斑痕の長さは、両端を定規で直線的に測定すると約二・五センチメートルであるが、斑痕の形に沿ってこれを測定すると三センチメートルに及ぶ。また、同部位には時折、ひきつれ感が残存している。
 自動車保険料率算定会は、原告の右障害は等級表上の後遺障害には当たらないとの判断をなした。

  2 後遺障害の有無、程度に関する判断
 原告の顔面の線状痕は、斑痕に沿ってこれを測定すると三センチメートルに及ぶこと、眉毛の脱毛を伴い、顔の中でもかなり目立つ部位にあることを考慮すると、原告の右障害は等級表一二級一四号に該当するものであり、もしくはこれに相当するものと認められるが、右障害の性格、程度に照らし、逸失利益をもたらす程度には至っていない。


解説

 線状痕に関しては,後遺障害12級14号(外貌に醜状を残すもの)の認定基準として,「長さ3センチメートル以上」であることが必要だとされています。

 そして,線状痕に関する上位等級として,後遺障害9級16号(外貌に相当程度の醜状を残すもの)があり,その認定基準は,「長さ5センチメートル以上」であることが必要とされています。9級16号は,線状痕の外貌醜状で認定される最上位等級となります。

 本件は,瘢痕の長さについて両端を定規で直線的に測定すると約2.5センチメートルであることから,自賠責では非該当とされた事案です。

 本判決は,「痕に沿ってこれを測定すると三センチメートルに及ぶこと、眉毛の脱毛を伴い、顔の中でもかなり目立つ部位にあることを考慮すると、原告の右障害は等級表一二級一四号に該当」もしくは相当すると判断しました(但し,逸失利益については否定されています)。

 本判決は線状痕の測定方法について触れた裁判例の一つとして,実務上参考になると考えられます。

 当職が取り扱った解決事例においても,事前認定で線条痕の長さが直線で5センチメートルに満たないとして9級16号が認定されず,12級14号の認定にとどまっていた事案について,本判決を先例として示した上で,瘢痕の上に糸を重ね,その糸の長さを計測する方法を示して異議申し立てをしたところ,異議申し立てが認められて9級16号に昇級したものがあります。

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