男性の家事従事者について、賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎収入として休業損害・逸失利益が算定された事例

横浜地判平成24年7月30日 交通事故民事裁判例集45巻4号922頁

争点

 妻が正社員として働き,洗濯,掃除,料理等の家事労働を行っていた男性(52歳)について,家事従事者の休業損害・逸失利益が認められるかが争点となりました。

判決文抜粋


イ 休業損害

 (原告の主張)
 原告は家事従事者であり、収入については、賃金センサス産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者全年齢平均の賃金額を基礎とすべきであり、平成18年から同22年までの賃金センサスの平均はおよそ347万円であるから、これを基礎として算定すべきである。

(被告の主張)
 原告が家事従事者であることの立証がない。
 また、原告が家事従事者の側面を有していたとしても、女性の専業主婦と同様に考えるべきではない。男性の家事の場合には、通常の家事労働とは質的・量的に異なる場合も少なくなく、これを家事労働と評価しうるか、評価しうるとして、その評価の程度をどうするかは慎重に判断する必要がある。

ウ 後遺症による逸失利益
(原告の主張)
 原告の後遺症等級は10級で、労働能力喪失率は27パーセントである。平成21年の賃金センサス産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者全年齢平均の賃金額348万9000円を基礎として算定すべきである。

     348万9000円×0.27×10.3797(15年のライプニッツ係数)=977万7988円
(被告の主張)
 労働能力喪失率を27パーセントとする原告の主張は過大であり、また、労働能力喪失期間も過大である。

第3 争点に対する判断

(1)休業損害

 ア 甲20、22、23及び原告本人尋問の結果によると、本件事故当時、原告の妻が正社員として働いており、原告が専業主夫として洗濯、掃除、料理、食器洗い等の家事労働を行っていたことが認められ、原告は家事従事者に該当すると認めることができる。
 イ 家事従事者の休業損害は、学歴計・女性全年齢平均賃金を基礎として算定すべきである。
 原告の休業損害の基礎収入は、入院して休業を開始した平成18年の学歴計・女性全年齢平均賃金は、343万2500円である。原告は、就労している妻に代わって家事労働を行っており、原告がかかる賃金に相当する労働を行っていたと認められるから、これを基礎とする。

(2)後遺症による逸失利益
 ア 基礎収入は、症状固定した平成22年の賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金345万9400円を基礎とする。


解説

 家事従事者の基礎収入については,学歴計・女性全年齢平均賃金をもとに算定されるのが一般的です。

 基礎となる賃金センサスは「女性」全年齢平均賃金ですが,家事従事者であれば男女を問いません。

 したがって,本件の事故被害者は男性ですが,女性の家事従事者の場合と同様に,学歴計・女性全年齢平均賃金を基礎として,休業損害・逸失利益が算定されています。

 また,本判決では,休業開始年の賃金センサスを基礎収入として休業損害が算定され,症状固定年の賃金センサスを基礎収入として後遺障害逸失利益が算定されています。

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