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症状固定前に自殺した被害者について、予想される後遺障害の逸失利益が認められた事例

2019.06.08

大阪地判平成19年2月16日交通事故民事裁判例集40巻1号228頁

争点

 交通事故後,症状固定前に自殺した会社役員について,主位的主張として自殺は事故が原因だとして事故と自殺との間の因果関係が,予備的主張として自殺しなければ後遺障害が残存する可能性が高かったとして後遺障害の逸失利益が争点になりました。

判決文抜粋


 ◯は,前記のMRI検査以降,躁状態に陥り,その後,うつ状態に移行し,うつ状態の時点で自殺したものと認められる。そして,本件事故がなければ,MRI検査を受ける必要はなく,MRI検査を受けなければ,うつ状態に陥る可能性もまた乏しく,うつ状態に陥ることがなければ,◯は自殺に至ることはなかったと考えられるから,本件事故がなければ◯が自殺することはなかったといえ,本件事故と◯の死亡との間に事実的な因果関係はあるものと認められる。
(3) しかしながら,◯がMRI検査後に躁状態に陥った原因については,本件の各証拠をもってしても明らかでないといわざるを得ず,本件事故と◯の自殺による死亡との間には相当因果関係は認められない。理由は,以下のとおりである。
 前記のとおり,◯は,本件事故により,足の長さが異なるなどの障害を負い,このことをMRI検査以前から気にしており,また,職場になかなか復帰できず,居場所がなくなるのではないかという焦燥感をMRI検査前から抱いており,MRI検査を行う時点で入院期間も長期に及んでおり,これらの各事情は◯にとって精神的に大きな負担となっていたものと考えられ,これらの事情が◯が躁状態に陥ったことの一因となった可能性は否定できない。
 しかし,前記のとおり,◯にはMRI検査以前には本件事故から約1年間問題行動はなかったのであり,精神状態の変化は急激なものであるといわざるを得ないところ,前記の各負担が蓄積して突発的に躁状態を発症したことを裏付ける確たる証拠は存在しないといわざるを得ない。
 そして,本件において,◯は,MRI検査を機に躁状態を発症しているが,MRI検査が,被検者の精神活動,脳機能等に対して,有害な影響を及ぼす危険性が高く,本件においてその危険性が現実化したと認めるに足りる証拠はない。
 以上からすると,◯は,本件事故により後遺障害を負い,就労が困難になったことなどによるストレスが主たる原因となってMRI検査後に躁状態に陥ったとは認められず,また,MRI検査の人体に対する高度の危険性が現実化して◯が躁状態に陥ったとも認められず,本件事故と◯の死亡との間には,相当因果関係は認められないといわざるを得ない。
(4) 以上のとおり,主位的請求には理由がないから,争点3(心因等を理由とする減額の当否)については,判断の必要がない。
 3 争点4(残存が予想される後遺障害の有無,内容及び程度。予備的請求における争点)について
(1) 前記のとおり,本件事故と◯の死亡との間に相当因果関係は認められないが,仮に◯が自殺をしなかったとすれば,後記のとおり,◯には後遺障害が残存した蓋然性が高かったと認められる。
  そのような場合は,残存する蓋然性が高いと認められる後遺障害を負ったものとして損害賠償請求権が成立するというべきである。

(5) 残存が予想される後遺障害の等級及び労働能力喪失率
 前記のとおり,◯の下肢短縮障害は13級に該当し,右股関節機能障害は12級に該当するから,両者は,併合して11級に該当するものと認めるのが相当である。
 そして,前記のとおり,◯の各障害はいずれも症状固定に至っておらず,仮にリハビリを続行した場合に,障害が改善する可能性は否定できないから,この点を考慮して,11級における通常の労働能力喪失率20パーセントから3パーセントを減じ,◯の労働能力喪失率は17パーセントであると認めるのが相当である。


解説

 交通事故後に被害者が死亡した場合,事故と死亡との間に相当因果関係が認められれば,死亡による損害が認められます。

 本件は事故後に被害者が自殺した事例ですが,事故と自殺との間の相当因果関係は認められませんでした。

 他方,症状固定前に自殺し,後遺障害の等級認定をうけていないところ,自殺しなければ後遺障害が残存していた蓋然性が高かったとして,残存する蓋然性が高いと認められる後遺障害を負ったものとして後遺障害逸失利益の損害が認定されました。

 本判決では,リハビリによる障害の改善可能性は否定できないとして,11級における通常の労働能力喪失率20%よりから3%減じた17%が認定されています。

 この点は,症状固定前に至っていない時点の症状から後遺障害を予想しているため,過大評価のおそれがあることを考慮したためだと考えられます。

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