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自営業者について、申告所得を超える基礎収入が認められた事例

2019.04.21

大阪地判平成18年6月16日自動車保険ジャーナル1668号20頁

争点

 自営業者である原告の事故前年度申告所得が約346万円であるところ,実収入はそれを大きく上回るとして,基礎収入の額が争いになりました。

判決文抜粋


 ア 逸失利益
(ア) 証拠によれば,亡Aは専門学校を中退後,内装工事を行う会社で就労した後,内装工として独立したこと,平成12年ころからはB株式会社の下請けとして仕事をするようになり,平成12年8月から平成13年7月までの1年間にB株式会社からの分も含め内装業の代金の振り込みが704万9766円であったこと,平成14年1月から12月までの内装業の代金の振り込みが781万1947円であったこと,平成14年度の申告所得は346万2000円であったことが認められる。
 被告らは,B株式会社からの入金分には数人分の日当が振り込まれていたと主張するが,振り込まれた内装代金のうち,かなりの割合が振り込み後数日のうちに引き出され,振り込まれる口座の残高は親子4人で生活するには不足する金額であること,従業員を抱えていたことを伺わせるような事情は本件各証拠に照らしても認められないことに鑑みれば,被告らの主張は憶測の域をでるものではない。
 他方,原告らは,経費はわずかであったことから振り込まれた代金がほとんどそのまま所得であったと主張する。たしかに,会社の従業員であることをやめ,あえて内装工として独立して営業を行っていることからすれば,少なくとも従業員として稼働していた場合よりも高い収入が得られていたものと推認することができ,そうであれば,申告所得額がそのまま実際の所得であったとは解しがたい。しかしながら,経営状況が正確に把握されていた訳ではなく,原告らが主張する程度の所得を得ていたとまでは認められない。
 ただ,これらの事情に加え,亡Aは,本件事故当時27歳であったことを考慮すれば,将来にわたり,亡Aが平成15年度賃金センサス産業計・企業規模計・男性労働者の全年齢平均賃金547万8100円の収入を得る蓋然性は十分にあったものと認められるから,これを基礎収入として採用するのが相当である。


解説

 自営業者の場合,原則として事故前年度申告所得が逸失利益の基礎収入になるとされています。

 そのため,節税目的で多額の経費を計上するなどして,実収入と乖離した低い所得が申告されていた場合,基礎収入の額が争いになることがあります。

 実収入について立証があれば実収入額を基礎とするのが理論的には正しい考え方ですが,裁判所は申告外収入を認めたがらず,厳格な立証が求められています。

 修正申告を行っても,それだけでは認められないのが実情です。

 本件は,事故前年度の平成14年1月から12月までの内装業の代金の振り込みの履歴から781万1947円の入金があったことは証明されたが,一方で,経営状況が正確に把握されていないことをもって,原告が主張する程度の所得までは認められられないとして排斥しました。

 その上で,賃金センサス産業計・企業規模計・男性労働者の全年齢平均賃金547万8100円の収入を得る蓋然性は十分にあったものと認められるとして,賃金センサスを基礎収入として採用しました。

 本件は,申告所得を超える基礎収入が認められた裁判例の一つとして参考になると思われます。

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