大阪・高槻市で交通事故に強い弁護士

弁護士との無料相談はこちら 0120-543-081
受付時間 平日 9:00-18:00

自賠責保険における重過失減額とはどのようなものですか?

2019.06.21

自賠責保険における重過失減額

 自賠責保険においては,被害者救済の見地から,被害者に7割以上の重大な過失があった場合には減額されますが,7割未満の過失があっても減額されない扱いとなっています。

 減額割合を整理すると以下の表の通りとなります。

 また,傷害による損害額(後遺障害または死亡に至るものは除く)が20万円未満の場合は減額は行われず,減額により20万円以下となる場合には20万円になります。

被害者の過失割合 減額割合
後遺障害または死亡に係るもの 傷害に係るもの
7割未満 減額なし 減額なし
7割以上8割未満 2割減額 2割減額
8割以上9割未満 3割減額
9割以上10割未満 5割減額

被害者の過失が大きい場合の実務上の注意点

 自賠責の保険金支払い基準と裁判基準とでは大きな開きがありますが,被害者の過失割合が大きい場合には,自賠責保険金の方が高額になることがあります。

 過失割合について争いがなく,自賠責保険金の方が過失相殺後の裁判基準の賠償額よりも多い場合には,被害者請求手続きによって自賠責保険金を受け取る方が有利といえます。

 とはいえ,任意保険会社が自賠責保険部分も含めて被害者へ賠償金の支払いを行う一括払,一括対応と呼ばれる手続きを取っている場合には,任意保険会社は賠償後任意保険会社から自賠責保険金を受けとることができるため,自賠責保険の支払基準を下回る額を提示することは行われていない実務となっています。このため,過失割合に争いがない場合,被害者がわざわざ被害者請求手続きをする必要があるケースは少ないと言えます。

 一方,過失割合が争われているために示談交渉がまとまらず,訴訟でどのような判断がなされるかも予測がつかない場合には注意が必要です。

 何故なら,訴訟において過失割合の判断が確定した場合には,自賠責保険への請求についてもその過失割合の判断に拘束されてしまうからです(最一小判平成24年10月11日集民241号75頁)。

 自賠法に基づいて損害賠償を請求するときに裁判所が自賠責保険の支払基準に拘束されない(非拘束説)との判断が示された判例(最一小判平成18年3月30日民集60巻3号1242頁)の事案は,裁判基準による算定額の方が自賠責保険金の支払基準よりも有利な事案でした。

 その後,最一小判平成24年10月11日集民241号75頁は,裁判基準による算定額の方が自賠責保険金の支払基準よりも不利な場合でも平成18年判例の射程が及ぶことを明らかにしました。

 このため,過失割合について予測がつかない場合には,自賠責保険への被害者請求を先行し,残額を訴訟で請求するという工夫が必要になっています。

 過失相殺後の賠償額が受け取った自賠責保険金よりも多ければ,その分が訴訟で損害として認められることになります。一方,自賠責保険金の方が多い場合には請求棄却となりますが,既に受け取った自賠責保険金の返還が求められることはないため,賠償額が自賠責保険金を下回るリスクを避けることができます。

最一小判平成24年10月11日集民241号75頁


 3 原審は,以上の事実関係等の下において,◯の損害額を7500万円,◯の過失割合を8割とした上で,次のとおり判断して,被上告人の請求を600万円の限度で認容した。
 支払基準によれば,被害者の過失割合が8割の場合には,保険金額から3割の減額をすべきものとされているから,上告人は保険金額3000万円から3割減額した金額である2100万円を支払うべきであったところ,上告人が実際に支払ったのは1500万円であるから,上告人は,被上告人に対して,その差額600万円を支払うべきである。
 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 法16条1項に基づいて被害者が保険会社に対して損害賠償額の支払を請求する訴訟において,裁判所は,法16条の3第1項が規定する支払基準によることなく損害賠償額を算定して支払を命じることができるというべきである(最高裁平成17年(受)第1628号同18年3月30日第一小法廷判決・民集60巻3号1242頁)。そして,法15条所定の保険金の支払を請求する訴訟においても,上記の理は異なるものではないから,裁判所は,上記支払基準によることなく,自ら相当と認定判断した損害額及び過失割合に従って保険金の額を算定して支払を命じなければならないと解するのが相当である。

しかるに,原審は,◯の損害額を7500万円,◯の過失割合を8割としながら,これらを前提とした過失相殺をせず,上記支払基準によれば上告人が2100万円の保険金を支払う義務があると判断して,被上告人の請求を一部認容したのであり,この判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,上告人は,上記損害額から上記過失割合により過失相殺をした後の1500万円に相当する損害賠償額を既に支払済みであるから,これ以上保険金を支払う義務を負わない。そうすると,被上告人の請求は理由がなく棄却すべきものであって,第1審判決は結論において是認することができるから,上記部分に関する被上告人の控訴を棄却すべきである。


 

交通事故Q&Aの関連記事