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むち打ち症の後遺障害が認定された場合、通常よりも逸失利益が少なくなるというのは本当でしょうか?

2019.05.31

軽度の神経症状と労働能力喪失期間

 後遺障害逸失利益とは、交通事故によって後遺障害が生じなければ得られたはずの利益のことを言い,後遺障害逸失利益は以下のような方法で算定されます。

 用語の意味等については,「後遺障害の逸失利益」を参照下さい。 

後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数

 骨折等の器質的損傷を伴わない軽度の神経症状である,いわゆる「むち打ち症」については,一生残るものではなく,一定期間が経過すれば治癒していくというのが一般的な医学的知見であるため,交通事故の損害賠償実務においても,労働能力喪失期間を一定期間に限定して逸失利益が算定されています。

 そのため,就労可能期間まで労働能力喪失期間が認定される場合と比べ,むち打ち症の後遺障害逸失利益の額は少なくなる計算になります。

 一方,むち打ち症以外の神経症状については,労働能力喪失期間を限定するか,就労可能期間まで認めるかは裁判例で判断が分かれています。

むち打ち症の労働能力喪失期間の目安

 日弁連交通事故相談センター「損害賠償算定基準(2020年度版)」(通称「赤い本」),日弁連交通事故相談センター「交通事故損害額算定基準(27訂版)」(通称「青本」),大阪弁護士会交通事故委員会「交通事故損害賠償額算定のしおり(20訂版)」(通称「緑本」「緑のしおり」)に記載されているむち打ち症の労働能力喪失期間の目安をまとめると,以下の表の通りとなります。

 その他に実務で参照されている文献としては,日弁連交通事故相談センター愛知県支部「交通事故損害賠償算定基準」(通称「黄色い本」「黄本」)があります。

  赤い本 青本 大阪地裁(緑のしおり)
14級9号 5年 5年 3~5年
12級13号 10年 10年 5~10年

目安を超える労働能力喪失期間が認定された裁判例

 実務の目安となっている労働能力喪失期間は前述のとおりですが,個別の事情に応じて,長期間の労働能力喪失期間が認められた裁判例もあります。

 例えば,福岡地判平成26年2月13日自保ジャーナル1920号56頁は,むち打ち症で後遺障害14級9号が認定されていた被害者について,12級13号には該当しないと判断したものの,症状の重さを考慮して,労働能力喪失率9%,労働能力喪失期間10年間を認定しています。

福岡地判平成26年2月13日自保ジャーナル1920号56頁


 2 後遺障害について
 (1) 原告は,MRI検査で腰椎椎間板ヘルニアの好発部位であるL5/S1ヘルニアが認められるとして,腰部の神経障害は,医学的な他覚知見により証明されており,腰部に頑固な神経症状を残すと認められ,後遺障害等級別表第二第12級13号に該当する旨主張している。
 (2) しかし,MRI検査でL5/S1ヘルニアが認められるとまではいえないことは,上記のとおりであり,自賠責保険の事前認定でも,頚部捻挫後の頚部痛,腰部捻挫後の腰痛のいずれも,提出の画像上,本件事故受傷による骨折等の器質的損傷は認められず,後遺障害診断書上,知覚・筋力・反射等には特に問題なしと記載されていることから,他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えることは困難であるとしつつも,症状の推移や治療経過等を勘案すれば,将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから,いずれも「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものとし,この2つを併合した結果,別表第二併合第14級と判断している。これに対し,異議申立てがあったが,上記判断は維持された
 (3) この判断については,特段の不合理な点はなく,首肯できるものであるから,原告の後遺障害については,別表第二第14級に該当するものと解される。
 ただし,被害車両の全損の状況,被告は,追突時にブレーキをかけたこと等を総合すれば,本件事故により,原告の受けた衝撃は,相当に大きなものであったと認められること,陳述書,◯病院の診療録,原告本人尋問によれば,本件事故後しばらくの間,首から肩にかけて強い痛みがあり,立っていることも困難な状態であったこと,その後も頭痛,吐き気を伴う痛みが持続していることが認められることから,通常のむち打ちの場合に比して,一定の調整をするのが相当であると解される。

イ 労働能力喪失率
 上記2(3)のとおり,原告の後遺障害については,別表第二第14級に該当し,通常5%とされるところ,原告の症状等に鑑み,9%とするのが相当であると解される。
ウ 労働能力喪失期間
 原告の症状等に鑑み,10年間とするのが相当であると解される。ライプニッツ計数は7.7217となる。


 

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