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事故で自宅の改造が必要な障害が残ってしまったのですが、自宅の改造費用は認められるのでしょうか?

2018.05.13

家屋改造費

 重度の後遺障害を負った被害者が在宅の介護を受けて生活しようとする場合,日常生活上の困難の解消のために事故前に居住していた自宅の改造等が必要になることがあります。

 具体的な改造内容としては,トイレや浴室の改造や玄関のスロープの設置,段差の解消などが考えられます。

 このような家屋改造費については,後遺障害の内容や程度に応じて必要かつ相当な限度で認められています。

 一方,不相当に高級な仕様については一般的な仕様の範囲に損害が限定されることもあります。

 例えば,理由がないのに被害者の療養室を2階に設け,エレベーターを設置したというような場合には,必要性が認められないと思われます(高取真理子裁判官の講演録「重度後遺障害に伴う諸問題~将来の介護費用を中心として(交通事故による損害賠償の諸問題Ⅲ267頁)」)

 改造の必要性の判断については,一般的には1級などの重度の後遺障害の場合に認められる傾向にありますが,改造内容によっては,必ずしも重度とはいえない後遺障害等級でも認められることがあります。

 例えば,京都地判平成14年12月12日自保ジャーナル1497号6頁は左大腿骨顆上骨折後の左膝の疼痛で12級12号が認定された67歳主婦の事例ですが,自宅での家事や歩行の困難解消のため,家屋内の段差解消,台所流し台の改造,廊下・浴室・トイレ等への手すりの設置等の改造費として313万1,400円が認められています。

 京都地裁平成14年判決については,後述する家族の利便の考慮の点について,事実上の事柄にすぎないとして減額を行っていない点にも着目されます。

京都地判平成14年12月12日自保ジャーナル1497号6頁


(6) 家屋改造費用について
 証拠及び弁論の全趣旨によると,原告は,本件事故による後遺障害のため,自宅での家事,歩行に困難を来すようになり,家屋内の段差の解消,台所流し台の改造,廊下,浴室,トイレ等への手すりの設置等の改造を行い,その費用として313万1400円を支出したことが認められるところ,上記(5)ア記載の後遺障害の内容及び程度並びに症状固定当時の原告の年齢に照らし,上記の家屋改造は相当なものであったと認められるから,上記金額を本件事故と相当因果関係に立つ損害と認める。
 これに対し,被告らは,上記家屋改造は原告の夫の利便にも相当程度役立っているから本件事故と相当因果関係がないと主張するが,上記家屋改造が原告の夫の利便に役立っているとしても,それは事実上の事柄にすぎないから,被告らの上記主張は採用しない(なお,被告らは,耐用年数の考慮あるいは中間利息の控除が行われるべきであるとも主張するが,その趣旨はにわかに理解し難い。)。


家族のための利便の考慮

 エレベーターの設置などの家屋の改造により,同居の家族にとっても利便性が向上することがあります。

 このような場合に,同居の家族の利便となっている事情を,単なる反射的利益と考えるかどうかが問題となります。

 家族のための利便は反射的利益に過ぎないと判断された裁判例もありますが(前掲京都地裁平成14年判決,大阪地判平成18年4月26日自動車保険ジャーナル1662号16頁等),損益相殺的な調整を行い,全額を認めずに割合的な認定をしている裁判例が多いとの指摘があります(前掲講演録267頁)。

 また,大阪地裁民事交通訴訟研究会編著「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(第3版)」31頁では,「家屋改造費等につき,同居の家族がそれにより利便を得ていると認められる場合は,一定程度減額することがある」と指摘されています。

 よく争いになるのはエレベーター設置のケースですが,大阪地判平成10年6月29日交通事故民事裁判例集31巻3号929頁では,ホームエレベーターの設置費用について,他の家族の利便と生活向上にもつながるとして,その8割が相当因果関係を有する損害として認められています。

大阪地判平成18年4月26日自動車保険ジャーナル1662号16頁


 (2) 被告は,損害額について,原告主張の改造が不必要なものであるという主張に加え,改造により家屋の損耗部分が回復されること,改造が原告の弟等の便益にも資することを指摘して,その減額を主張する。
 しかしながら,損耗部分の回復に関しては,実施の必要性が認められる改造のうち,損耗部分の回復をもたらすものは限られていることから,個別の工事項目においてこの点を検討する以外には,これを考慮しないことが相当である。
 また,原告以外の者にとって便益をもたらす点については,実施の必要性が認められる改造のうち,原告以外の者にとって便益をもたらすものは多くなく,また原告以外の者が便益を享受することをもって,原告の損害額が減額されるのは相当ではないから,この点の被告の主張は認められない。


大阪地判平成10年6月29日交通事故民事裁判例集31巻3号929頁


8 自宅改造費 七七四万九〇〇〇円
 前記争いのない事実等、証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告花子の介護のためには、原告花子の後遺障害の内容からみて、現在の住居(市営住宅の一一階、床面積五八・二〇平方メートルの三DK)では不適であり、新たに購入する居宅においては、自宅内を車椅子で移動できるようにホームエレベータを設置し、入浴、排便等が容易に行えるように水平トランスファーシステムを設置する必要があること、及び右工事には合計八八二万円の支出を要することが認められる。
 ただし、ホームエレベーターの設置については他の家族の利便と生活向上にもつながるものであるから、右設置代金の八割をもって本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。


新築の場合

 改造によっては日常生活上の困難を解消できなかったり,事故前に居住していたのが賃貸物件で改造ができず,要望を満たす賃貸の介護住宅も見つからなかったり,建物を改造するよりも新築した方が経済的である等の事情により,新築工事の必要性・相当性が認められる場合には,新居取得費用も損害として認められています。

 但し,新築建築,特に敷地の購入も行う場合,資産として将来も残ることから,新居取得費用のうち,どこまで損害として認められるかが問題となります。

 この点,割合の認定根拠については必ずしも明らかではありませんが,裁判例では,新居取得費用の何割かを損害として認めて処理する例が見られます。

 東京地判平成15年2月27日交通事故民事裁判例集36巻1号262頁では,以下の理由に基づいて新居宅の購入費用の10%が損害として認められています(但し,割合の認定根拠は明らかではありません)。

  1. 必要な改造を加えたとしても,被害者とその家族が旧居宅に居住することは実際上不可能であり,本件事故を契機として,より広い家屋を購入する必要が生じたことは明らかである
  2. 広い家屋の購入は被害者ら家族の利便と生活の向上をもたらすものであるが,被害者が本件事故により重大な後遺障害を負わなければ,当面新居宅を購入する必要もなかったことからすれば,新居宅の購入費用の一部は,本件事故と相当因果関係を有する損害に当たる

東京地判平成15年2月27日交通事故民事裁判例集36巻1号262頁


 (七)家屋改造費                  808万6500円
 甲5の1ないし3,6の1・2,18,20,乙2,原告◯本人に前記第2の1の事実を総合すると,① 原告◯は,本件事故により,第7胸椎粉砕骨折(対麻痺),第3・4頸椎中心性脊髄損傷の傷害を負い,その結果,全下肢麻痺,排尿障害等の後遺障害が残り,後遺障害等級1級3号に該当すると認定されたこと,② 原告◯の下肢は全面的に麻痺しており,その運動機能は失われ,歩行は不可能であって,室内及び室外での移動は車椅子によっていること,③ 原告◯は,入浴,外出,その他日常生活の多くの面で,家族の介助を必要とすること,④ 原告◯は,尿が常に出ている状態であり,常時,尿取りパッドや大人用おむつを使用していること,また,1日数回,自ら導尿管を尿道に挿入して尿を排泄していること,さらに,排便は自己摘便によっていること,⑤ もっとも,上肢については,軽度の知覚障害又はしびれ感があるものの,現在のところ運動機能は正常であることから,食事は自分で取ることができ,車椅子を使用して移動することができること,が認められる。以上の事実によれば,原告◯が自宅で生活するためには,段差の解消等の家屋改造を加える必要のあることが明らかである。
 そして,甲11の1ないし5,15,19ないし21によれば,⑥ 本件事故当時,原告ら家族が居住していた旧居宅は,敷地の面積が47.05平方メートルであり,建物(木造スレート葺2階建て)の1,2階の床面積はそれぞれ28.00平方メートルにすぎなかったこと,⑦ 原告◯が旧居宅で生活することができるようにするため,屋外リフト取付工事,1階段差解消機取付工事,1階浴室・便所・洗面所工事,2階洋室フローリング工事,2階押入れ改装工事,水廻り天井走行リフト工事を行った場合には,1711万5000円の改造費用が必要との見積りが提出されていること,⑧ しかし,この改造工事を行い,さらに電動ベッド等を設置した場合には,原告◯が車椅子で動くための空間がほとんどなくなり,他の家族3名が生活する空間もなく,実際上,原告ら家族が旧居宅に居住するのは不可能であったこと,⑨ そこで,原告◯と原告△は,平成12年3月,現住所地に6480万円で新居宅(マンション)を購入するとともに,玄関の段差解消スロープの設置等のバリアフリー工事を行い,これに160万6500円を要したこと,⑩ 新居宅の購入費用は,うち2360万円を住宅金融公庫からの融資に,3320万円を東京労働金庫からの融資によっていること,が認められる。
 そこで,検討するに,旧居宅は大変狭く(⑥),必要な改造を加えたとしても,原告◯とその家族が旧居宅に居住することは実際上不可能であったから(⑧),本件事故を契機として,原告らにおいて,より広い家屋を購入する必要が生じたことは明らかである。もとより,広い家屋の購入は原告ら家族の利便と生活の向上をもたらすものであるが,原告◯が本件事故により重大な後遺障害(①ないし⑤)を負わなければ,当面,新居宅を購入する必要もなかったことからすれば,新居宅の購入費用の一部は,本件事故と相当因果関係を有する損害に当たると認めるのが相当である。そして,⑦の事実からすれば,仮に旧家屋を改造して原告◯が旧家屋で生活することとしたとしても,少なくとも数百万円の改造費用を要したものと認められるから,原告らの主張するように,新居宅の改造費用160万6500円に加えて,新居宅の購入費用6480万円の10%に相当する648万円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である。
 したがって,家屋改造費としては,808万6500円が認められる。


 

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