自動二輪車や原動機付自転車のヘルメット不着用の事情は、過失割合の判断においてどの程度考慮されるのでしょうか?

自動二輪車や原動機付自転車のヘルメット不着用に関する法規制

 道路交通法71条の4第1項・第2項は「大型自動二輪車又は普通自動二輪車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転し、又は乗車用ヘルメットをかぶらない者を乗車させて大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転してはならない(1項)」「原動機付自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで原動機付自転車を運転してはならない(2項)」と定め,ヘルメット不着用での自動二輪車や原動機付自転車の運転が禁止されています。

 道路交通法71条の4第1項又は第2項違反については,違反点数や反則金の定めはあるものの,刑事罰は課されていません。

自動二輪車や原動機付自転車のヘルメット不着用の事情の考慮

 過失割合の判断については,実務上,別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(以下,「別冊判タ」といいます)に記載された基準が参照されています。

 検討の流れとしては,まずは,問題となっている交通事故が別冊判タに掲載された基準のどの類型に近いかを調べます。

 別冊判タに記載のある事故状況である場合,当該基準の基本割合をもとに,修正要素の有無を検討することになります。認定基準にない事故類型の場合,掲載されている近い類型の基準の過失割合を参考に修正を加えるという考え方が取られています。近い類型の基準すら掲載されていない非典型事故の場合には,類似の事故態様の裁判例における判断を参考にしながら過失割合を検討することになります。

 修正要素には,別冊判タの各基準毎に明記されているものもあれば(例えば,信号機により交通整理が行われていない交差点において,対抗右折車と直進車が衝突した類型の基準114では,対抗右折車の早回り右折や大回り右折の事情が直進車の-5%の修正要素として明記されています),問題となっている交通事故の状況から,著しい過失や重過失に該当するかを個別に検討する必要があるものもあります。

 そして,別冊判タ全訂第5版59頁,312頁では,単車(自動二輪車及び原動機付自転車)の著しい過失の例としてヘルメット不着用が挙げられ,頭部外傷の傷害を受けた場合等,ヘルメット不着用が損害拡大に寄与しているときには著しい過失として修正するのが相当であると指摘されています。また,高速道路におけるヘルメット不着用は重過失と評価すべきだとの指摘があります。

 このように,自動二輪車や原動機付自転車のヘルメット不着用一般については著しい過失の修正要素として,高速道路におけるヘルメット不着用については重過失の修正要素として考慮することになります。

 自動二輪車及び原動機付自転車の著しい過失は基準によって5%~10%の評価の幅があり,重過失についても基準によって5%~20%の評価の幅がありますので,著しい過失や重過失がどの程度影響するかについては,各基準に問題となっている交通事故を当てはめた後に判断することになります。

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