慰謝料が増額する事由にはどのようなものがありますか?

慰謝料は増額できるか

慰謝料は、本来的には、交通事故の事情や傷害の程度など、全ての事情が総合的に考慮され、妥当な金額が認定されます。しかし、交通事故の発生件数は非常に多いこと、また公平・適正で迅速な処理を行う必要性から、裁判になった際の慰謝料の認定額は、できるだけ定額化しようとする動きが進んでいます。

しかし、個別の事情がある場合や、典型的にみて慰謝料を増額すべきとする事由がある場合には、慰謝料の増額が認められることもあります。

慰謝料増額の典型的事由

慰謝料の増額が認められる代表的な理由としては、交通事故の態様や加害者側の態度といった個別の事情が挙げられます。

具体的には、加害者に故意(わざと交通事故を起こした等)や重過失(単なる不注意以上の重大な不注意:無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反等)のある事故の態様の場合や、加害者に著しく不誠実な態度等(交通事故の際に被害者を救護しなかった、被害者に謝罪しない、交通事故に関して嘘をついたり不合理な弁解をする等)がある場合には、慰謝料を増額すべき事由として考慮されることになります。

しかし、慰謝料の増額が認められるのは、交通事故や加害者側の悪質性を理由として、通常以上の賠償を認めてあげなければ、被害者の公平を失すると考えられるような場合に、こうした被害者を救済しようとすることあります。したがって、単に被害者に見舞いに来た加害者の態度がそっけないとか、反省しているように感じられず不誠実に思う、といった程度では、「著しく」不誠実な態度とは評価されません。交通事故の被害者としては、加害者側に対する憤りや事故のショックから、加害者側は総じて不誠実に見えがちなので、そうした人情を盛り込んで慰謝料の基準額は制定されていると考えても間違いではないでしょう。

その他の慰謝料増額事由

上記のような慰謝料増額が認められる典型的な事由以外にも、交通事故の個別の事情によって、他にも慰謝料増額が認められるケースは様々あります。具体的には、妊娠中の女性が交通事故にあい、事故が原因で流産したケースや、交通事故の被害者の親族がショックのあまり精神疾患に罹患したなどの事情が慰謝料を増額する事由として考慮されうるものとして考えられます。

また、交通事故の態様や、事故の当事者に生じた事情だけに限らず、他の性質を有する賠償が不足する場合に、それを補てんする意味合いで、慰謝料の増額が認められる場合もあります。
具体的には、交通事故で顔や身体に跡が残ってしまった場合(「醜状痕」といいます)や、嗅覚などの五感に障害が残った場合等、逸失利益を算定することが不可能だったり、困難な後遺障害が残った場合に、逸失利益の代わりに慰謝料を増額して損害の賠償を認定するケースは少なくありません。また、将来必要となるであろう手術費の算定が困難または不可能な場合に、将来治療費としてではなく慰謝料を増額することでバランスを保つといったケースもあります。

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