シルバーマークや若葉マークを付けた高齢者や初心者である事情は、過失割合の判断においてどのように考慮されるのでしょうか?

高齢者・初心者に関する法規制

高齢者の場合

 75歳以上の者については,道路交通法71条の5第3項に「七十五歳以上のものは、内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けないで普通自動車を運転してはならない」との定めがあり,シルバーマークを普通自動車の前面及び後面につけて運転することが義務付けられています。

 一方,70歳以上75歳未満の者については,道路交通法71条の5第4項に「七十歳以上七十五歳未満のものは、加齢に伴つて生ずる身体の機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがあるときは、内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けて普通自動車を運転するように努めなければならない」との定めがあり,シルバーマークを普通自動車の前面及び後面につけて運転することの努力義務が課されています。

 そして,道路交通法71条第5号の4に「危険防止のためやむを得ない場合を除き、進行している当該表示自動車の側方に幅寄せをし、又は当該自動車が進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる表示自動車が当該自動車との間に第二十六条に規定する必要な距離を保つことができないこととなるときは進路を変更しないこと」との定めがあり,他の自動車がシルバーマークを付けて運転する自動車に対して幅寄せや割り込み等の行為を行うことが禁止されています。

初心者の場合

 免許を受けていた期間が通算して1年に達しない運転初心者については,道路交通法71条の5第2項に「普通自動車免許を受けていた期間が通算して一年に達しないものは、内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けないで普通自動車を運転してはならない」との定めがあり,初心者マークを付けて運転することが義務付けられています。

 そして,高齢者の場合と同様に,他の自動車が初心者マークを付けて運転する自動車に対して幅寄せや割り込み等の行為を行うことが禁止されています(道路交通法71条第5号の4)。

高齢者・初心者の事情の考慮

 道路交通法は,高齢者や初心者に対する幅寄せや割り込み等を禁止していますので,幅寄せや割り込み等が関係する事故態様においては,過失割合の判断において高齢者や初心者に有利に考慮される可能性が高いと考えられます。

 もっとも,シルバーマークや若葉マークを認識できる状況下にあったことが前提となり,位置関係から視認できなかったり,高齢者や初心者が適切にマークを表示していない等の場合には,有利に考慮することは出来ません。

 なぜなら,他の自動車の運転者がシルバーマークや若葉マークを認識することができてはじめて,高齢者や初心者の運転する車両に対して幅寄せや割り込み等をしてはいけないことがわかるからです。

 また,道路交通法は,他の自動車に対して幅寄せや割り込み等の一定の行為を禁止するにとどまり,高齢者や初心者の一般的な注意義務までを軽減しているわけではありません。

 したがって,単にマークを表示している高齢者や初心者運転者であるというだけでは,過失割合の判断において当然に有利に考慮されるということにはなりません。

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