自転車の2人乗り運転の事情は、過失割合の判断においてどの程度考慮されるのでしょうか?

自転車の2人乗り運転に関する法規制

 自転車も軽車両として道路交通法の適用を受けるところ,同法57条2項では「公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるときは、軽車両の乗車人員又は積載重量等の制限について定めることができる。」との定めがあり,各都道府県の道路交通規則では原則として自転車の2人乗りが禁止されています。

 例えば,大阪府道路交通規則11条1項では,自転車は原則1人乗りと定められ,但し書きで以下ア~エの場合にのみ,例外として2人乗りや3人乗りが許されています。

ア 16歳以上の運転者が幼児(6歳未満の者をいう。以下同じ。)1人を幼児用座席に乗車させる場合

イ 16歳以上の運転者が幼児2人を幼児二人同乗用自転車(運転者のための乗車装置及び2の幼児用座席を設けるために必要な特別の構造又は装置を有する自転車をいう。)の幼児用座席に乗車させる場合

ウ 16歳以上の運転者が4歳未満の者1人をひも等で確実に背負う場合(イに該当する場合を除く。)

エ 運転者以外の者1人をタンデム車(運転者及び運転者以外の者1人のための乗車装置を有し、かつ、ペダル装置が縦列に設けられた2輪の自転車をいう。)に乗車させる場合

 道路交通法57条違反については,2万円以下の罰金又は科料が法定刑として定められています(道路交通法121条1項7号)。

自転車の2人乗り運転の事情の考慮

 過失割合の判断については,実務上,別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(以下,「別冊判タ」といいます)に記載された基準が参照されています。

 検討の流れとしては,まずは,問題となっている交通事故が別冊判タに掲載された基準のどの類型に近いかを調べます。

 別冊判タに記載のある事故状況である場合,当該基準の基本割合をもとに,修正要素の有無を検討することになります。認定基準にない事故類型の場合,掲載されている近い類型の基準の過失割合を参考に修正を加えるという考え方が取られています。近い類型の基準すら掲載されていない非典型事故の場合には,類似の事故態様の裁判例における判断を参考にしながら過失割合を検討することになります。

 修正要素には,別冊判タの各基準毎に明記されているものもあれば(例えば,信号機により交通整理が行われていない交差点において,対抗右折車と直進車が衝突した類型の基準114では,対抗右折車の早回り右折や大回り右折の事情が直進車の-5%の修正要素として明記されています),問題となっている交通事故の状況から,著しい過失や重過失に該当するかを個別に検討する必要があるものもあります。

 そして,別冊判タ全訂第5版59頁,133頁,388頁には,自転車の著しい過失の例として,「2人乗り」が挙げられており,自転車の著しい過失の修正要素として考慮することになります。

 もっとも,公安委員会の規制に従った2人乗りや3人乗り(前述の大阪府交通規則11条1項ア~エ参照)であれば,道路における危険が著しく増加するとはいえず,著しい過失にはあたらないと考えられます。

 なお,自転車の著しい過失がどの程度の影響するかについては,基準により著しい過失の評価に5%~10%の幅があるため,各基準に問題となっている交通事故を当てはめた後に判断することになります。

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