病院で健康保険は使えないといわれましたが、交通事故の治療では社会保険は使えないのでしょうか?

自由診療と健康保険

 交通事故に遭って病院で診察を受ける場合,①保険のきかない自由診療による場合と,②保険診療による場合があり,どちらを選ぶかは患者である本人が決めることができます。

 そして,①の自由診療,②の保険診療のどちらを選んだ場合であっても,診療にかかった費用や治療費については,交通事故の過失割合に応じて,事故の相手方である加害者に対して負担を求めていくことになります。

交通事故における健康保険の使用

 健康保険(会社に勤めるサラリーマン等の加入する健康保険,国民健康保険,公務員共済及び船員保険を含む広義の健康保険)は,被保険者の疾病や負傷,出産や死亡について必要な保険給付を行うことを目的としています。
 今回の質問のケースでは,病院で「健康保険が使えない」と言われたとのことですが,実際はそのようなことはありません。

 交通事故の場合であっても,日常生活でけがをしたり病気にかかった際に健康保険を病院の窓口に提出して診療を受ける場合と同様に健康保険を使って診療を受けることができます。

病院から自由診療を勧められたら

 しかしながら,病院・医療機関にとっては,保険診療よりも自由診療で診療を行う方が多額の診療報酬を請求できるだけでなく,交通事故の場合には自賠責保険によって治療費分の金額の支払いを受けられるという担保(但し,120万円が上限となります)があります。

 そこで,心ない病院や医療機関が,交通事故診療の場合は健康保険が使えないなどと嘘の説明をして,自由診療を行おうとするケースがあります。

 仮に,病院や医療機関が健康保険は使えないと言い張って譲らないような場合,医師法19条で「診察治療の求があった場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない」と定められていることを根拠に健康保険の使用が正当な事由にあたるとして病院側と争うことも不可能ではありません。

 しかし,通常は事故の治療が1回きりで終わらず,継続的に通院が必要となることを鑑みると,そのような心無い病院や医療機関には見切りをつけて,きちんと治療をしてくれる病院に転院した方が良いでしょう。

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