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所得補償保険金は賠償金から差し引かれるのでしょうか?

2019.05.26

所得補償保険金と損益相殺

 所得補償保険は,怪我や病気になって働けなくなったときに,所得を補償する保険です。

 自営業者が所得補償保険を掛けていて,交通事故で受傷したときに保険金を受け取る場合があります。

 この受け取った所得補償保険は,加害者からの賠償金から差し引かれるのでしょうか。

 この点について,最高裁(最一小判平成元年1月19日集民156号55頁)は,

  1. 所得補償保険が傷病又は疾病そのものに対する填補ではなく,就業不能という保険事故により被った実際の損害を保険証券記載の金額を限度として填補することを目的として損害保険の一種であること
  2. 約款の規定はないが,代位が排除されておらず,商法661条(現行保険法25条)の適用によって,保険者(保険会社)が支払った限度で代位によって加害者に対する損害賠償権を取得すること

 を理由に,損害額から控除すべきであると判断しました。

 したがって,所得補償保険金については,損益相殺の対象となり,賠償金から差し引かれることになります。

 なお,休業損害額が控除の限界となり,他の損害項目からは控除することができないと考えられます。

最一小判平成元年1月19日集民156号55頁


 本件に適用される所得補償保険普通保険約款には、保険者代位の規定はないが、(1) 被保険者が傷害又は疾病を被り、そのために就業不能になったときに、被保険者が被る損失について保険金が支払われるものである(一条)、(2) 保険金の額は、就業不能期間一か月につき、保険証券記載の金額あるいは平均月間所得額の小さい方である(五条二項)、(3) 原因及び時を異にして発生した身体障害による就業不能期間が重複する場合、その重複する期間については重ねて保険金を支払わない(七条)、(4) 重複して所得補償保険契約を締結してあり、保険金の支払われる就業不能期間が重複し、かつ、保険金の合算額が平均月間所得額を超える場合には、保険金を按分して支払う(二七条)、(5) 約款に規定しない事項については日本国の法令に準拠する(三二条)との趣旨の規定があるというのであるから、本件所得補償保険は、被保険者の傷害又は疾病そのものではなく、被保険者の傷害又は疾病のために発生した就業不能という保険事故により被った実際の損害を保険証券記載の金額を限度として填補することを目的とした損害保険の一種というべきであり、被保険者が第三者の不法行為によって傷害を被り就業不能となった場合において、所得補償保険金を支払った保険者は、商法六六二条一項の規定により、その支払った保険金の限度において被保険者が第三者に対して有する休業損害の賠償請求権を取得する結果、被保険者は保険者から支払を受けた保険金の限度で右損害賠償請求権を喪失するものと解するのが相当である。保険会社が取得した被保険者の第三者に対する損害賠償請求権を行使しない実情にあったとしても、右の判断を左右するに足りるものではない。


 

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