弁護士費用は損害として認められるのでしょうか?

不法行為による損害と弁護士費用

 不法行為による損害賠償請求訴訟では,以下の最高裁判所の判例の通り,弁護士費用の一部が損害として認められています。そして,交通事故による損害賠償請求も不法行為による損害賠償請求であり,弁護士費用相当額が損害として認められます。

 具体的には,弁護士費用以外の損害を合計し,過失相殺などの減額,既払い金の控除等をしたあとの金額の1割程度が判決で弁護士費用相当額の損害として認められています。

最一小判昭和44年2月27日民集23巻2号441頁


訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。


示談交渉や訴訟上の和解など,判決による場合以外の取り扱い

 上記判例で「訴訟追行を弁護士に委任した場合には」と判示されているように,弁護士費用が損害として認められるのは,弁護士に委任して訴訟手続きを追行した場合に限られます。

 したがって,示談交渉の場合は,弁護士費用相当額は損害として認められていません。

 また,訴訟追行を弁護士に委任した場合であっても,判決によらず,和解で解決したときは,弁護士費用相当額が和解金の中で考慮されなかったり,調整金に含まれて一部だけが認められている傾向にあります。

弁護士費用特約を利用する場合

 裁判例を見ると,弁護士費用特約を利用した場合であっても,弁護士費用相当額の保険金は保険料の対価として支払われるものであるから,加害者は賠償義務を免れないとされています。

東京地判平成24年1月27日交通事故民事裁判例集45巻1号85頁


(3) 弁護士費用

原告が自動車保険契約の弁護士費用特約を利用していたとしても,弁護士費用相当額の保険金は原告の負担した保険料の対価として支払われるものであるから,原告に弁護士費用相当額の損害が発生していないとはいえない。


 もっとも,判決で弁護士費用相当額が損害として認定された場合,一般的に保険会社の約款では,弁護士費用相当額を差し引いて弁護士費用特約から支払う取扱いになっています。

 つまり,判決で認められた弁護士費用相当額を自分で受け取りつつ,二重に保険会社から弁護士費用特約にもとづく弁護士費用の支払いを受けることはできない仕組みです。

 したがって,弁護士費用特約を利用している場合,判決で弁護士費用相当額が損害として認定されても,手取りの額は増えないということになります。

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