年少者で働いていない場合でも 逸失利益は認められるでしょうか?

就労開始前の幼児、生徒、学生の逸失利益とは

年少者で働いていない場合でも、逸失利益は認められます。未就労の学生等の逸失利益は、基本的に、「交通事故に合わなければ、働いて得られたであろう平均的な金額」という基準に基づいて算定することになります。実際には、以下のように算定されます。

【就労開始前の幼児、生徒、学生の逸失利益】
=【基礎収入※】×【労働能力喪失率】×【(67歳-症状固定時の年齢)年のライプニッツ係数-(就労開始年齢-症状固定時の年齢)年のライプニッツ係数】

※原則:全年齢平均賃金を基礎収入とする。
例外:諸般の事情から被害者の大学進学が見込まれる場合には、大卒の賃金センサスによる基礎収入の算定が認められる場合も。

これについて、年齢別により具体的にみると、以下のようになります。

症状固定時に18歳未満だった未就労者の場合は

【基礎収入額】×【労働能力喪失率】×【(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)-(18歳に達するまでのライプニッツ係数)】

大学生等の未就労者

【基礎収入額】×【労働能力喪失率】×【(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)-(卒業に達するまでのライプニッツ係数)】

就労開始前の幼児、生徒、学生の逸失利益

学生や年少者等、就労していない若者が交通事故の被害者となり、事故の後遺症が残ってしまい、本来なら得られたはずの利益が得られないという事情が発生した場合には、まず逸失利益を算定する基準となる基礎収入を確定させることが重要となります。
就労開始前の幼児、生徒、学生については、原則として男女別の「全年齢平均賃金」を基礎収入とします。但し、被害者の方が大学に進学する前に交通事故にあったような場合で、諸般の事情から大学に進学することが見込まれるケースにおいては、大卒の賃金センサスによる基礎収入の算定が認められる場合もあります。

年少女子の逸失利益

男女別の賃金センサスによると、男子平均賃金より女子平均賃金のほうがかなり低額に設定されています。しかし、昨今の女性が社会で広く活躍するようになった社会環境や、一般的な労働者の就労状況等を考慮すれば、今後は男女間の賃金格差が縮小する方向性にあると考えられています。そこで、こうした観点から、交通事故における裁判の実務では、「年少女子」については原則として男女を合わせた全労働者の「学歴計全年齢平均賃金」を基礎収入と認定するケースが一般的になっています。

この「年少女子」について、「何歳までが年少女子とされる」という具体的な規定は存在しませんが、実務上は少なくとも中学卒業までは問題なく年少女子の範囲に含まれるとされています。高校生については争いもありますが、被害者側の方で「男女平均賃金」を用いて算定すべきという主張を、合理的に行うことが必要となるでしょう。

交通事故Q&Aの関連記事