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被害者の遺族ですが、葬儀費用は請求できますか?

2018.05.13

葬儀関係費用

 不法行為(交通事故)によって,被害者が亡くなった場合,葬儀費用が損害として認められています(最一小判昭43年10月3日判例時報540号38頁)。

 また,葬儀費用だけでなく,その後の法要費用,仏壇・仏具購入費や墓碑建立費等も損害として認められています(墓碑建設・仏壇購入費について,最二小判昭和44年2月28日民集23巻2号525頁)。

最一小判昭43年10月3日判例時報540号38頁


遺族の負担した葬式費用は、それが特に不相当なものでないかぎり、人の死亡事故によって生じた必要的出費として、加害者側の賠償すべき損害と解するのが相当であり、人が早晩死亡すべきことをもって、右賠償を免れる理由とすることはできない


最二小判昭和44年2月28日民集23巻2号525頁


 人が死亡した場合にその遺族が墓碑、仏壇等をもつてその霊をまつることは、わが国の習俗において通常必要とされることであるから、家族のため祭祀を主宰すべき立場にある者が、不法行為によつて死亡した家族のため墓碑を建設し、仏壇を購入したときは、そのために支出した費用は、不法行為によつて生じた損害でないとはいえない。死が何人も早晩免れえない運命であり、死者の霊をまつることが当然にその遺族の責務とされることではあつても、不法行為のさいに当該遺族がその費用の支出を余儀なくされることは、ひとえに不法行為によつて生じた事態であつて、この理は、墓碑建設、仏壇購入の費用とその他の葬儀費用とにおいて何ら区別するいわれがないものというべきである(大審院大正一三年(オ)第七一八号同年一二月二日判決、民集三巻五二二頁参照)。したがつて、前記の立場にある遺族が、墓碑建設、仏壇購入のため費用を支出した場合には、その支出が社会通念上相当と認められる限度において、不法行為により通常生ずべき損害として、その賠償を加害者に対して請求することができるものと解するのが相当である。
 もつとも、その墓碑または仏壇が、当該死者のためばかりでなく、将来にわたりその家族ないし子孫の霊をもまつるために使用されるものである場合には、その建設ないし購入によつて他面では利益が将来に残存することとなるのであるから、そのために支出した費用の全額を不法行為によつて生じた損害と認めることはできない。しかし、そうだからといつて右の支出が不法行為と相当因果関係にないものというべきではなく、死者の年令、境遇、家族構成、社会的地位、職業等諸般の事情を斟酌して、社会の習俗上その霊をとむらうのに必要かつ相当と認められる費用の額が確定されるならば、その限度では損害の発生を否定することはできず、かつその確定は必ずしも不可能ではないと解されるのであるから、すべからく鑑定その他の方法を用いて右の額を確定し、その範囲で損害賠償の請求を認容すべきである。


自賠責保険の基準

平成22年4月1日以降令和2年3月31日までに発生した事故に適用する基準

 60万円(必要かつ妥当な理由があり、実証資料により立証が可能であれば60万円を超えても100万円まで可能)

令和2年4月1日以降に発生した事故に適用する基準

 100万円

裁判上の取り扱い

 裁判実務上,葬儀関係費用については,社会通念上相当と認められる限度で損害として認められています。

 具体的には,一定の金額を基準として,その範囲内で実際に支出した額を限度として認める取り扱いが取られています。基準額を超える葬儀費用を請求する場合には,支出の必要性・相当性を立証する必要があります。

 葬儀関係費用の基準額については,日弁連交通事故相談センター「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)は150万円,日弁連交通事故相談センター「交通事故損害額算定基準」(通称「青本」)では130~170万円と定められています。

 赤い本,青本のいずれの基準においても,実際に支出した額が基準額を下回る場合は,実際に支出した額が損害となります。

 また,大阪地裁では,平成14年1月1日以降の葬儀関係費の目安が150万円とされています(交通事故損害賠償額算定のしおり(通称「緑のしおり」)参照)。

 なお,緑のしおりには実際の支出額が150万円未満の場合の取り扱いが明記されていませんが,緑のしおりを解説している大阪地裁民事交通訴訟委員会「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(第3版)」32頁において,「実際に支出した額が基準額を下回る場合は,実際に支出した額をもって損害と認めるのが相当」と指摘されていますので,大阪地裁の運用でも,実際の支出額が基準額を下回る場合には,その額が損害額となります

 裁判所がこのような定額方式を採用している理由としては,個々の被害者について社会通念からみて必要かつ相当とされる葬儀費用等を客観的な額として認定することが容易ではないことや,現実には被害者や遺族の社会的地位等によって葬儀の規模や方式が異なっているところ,そのような社会的地位による格差を全面的に認めることになれば,同じ交通事故の被害者であるにも関わらず葬儀費用に差異が生じ,不公平を生じさせるおそれがあることが挙げられます(佐久間邦夫=八木洋一編「リーガル・プログレッシブ・シリーズ5 交通損害関係訴訟[補訂版](青林書院2013年)」72頁)。

 葬儀関係費には原則として墓碑建立費,仏壇費,仏具購入費,遺体処置費等も含まれ,特別の事情がない限り,基準額に加えてこれらの費用を別途損害として認める扱いは取られていませんが,遺体運搬費用については別途認める扱いが取られています(緑のしおり該当部分の注②③,青本26訂版42頁)

 実際に150万円を超える高額の葬儀関係費を支出した場合に,これを認めたものもありますが,銀行支店長の死亡事故事案で,社会的地位から相当大規模な葬儀をせざるを得なかったとして葬儀費用200万円が認められた事例(札幌地判平成13年7月11日自保ジャーナル1439号9頁)等の特別な事情がある場合に限られ,原則として基準額の限度で認定されています。

札幌地判平成13年7月11日自保ジャーナル1439号9頁


(1)葬儀費用 200万円
 証拠及び弁論の全趣旨によると,亡◯は,本件事故時,勤務会社の支店長をしていたこと,その葬儀には,亡◯の社会的地位からして相当大規模にせざるをえなかったことが認められ,被告がその支出について争わない,別紙葬儀関係費用一覧表記載の諸費用も相当額に上ることからすると,葬儀費用として多くの費用を要したと認めることができる。これらの事情を考慮すると,亡◯の葬儀費用は200万円が相当である。


香典返しは損害として認められるか?

 香典返しについても相当な金額がかかる場合がありますが,損害として認められていませんので注意が必要です(名古屋地判平成25年2月27日自保ジャーナル1897号111頁,青本26訂版42頁等)。

 赤い本には「香典については損益相殺を行わず,香典返しは損害と認めない」と明記され,緑のしおりでも,該当箇所の注④に「香典については,損害から差し引かず,香典返し,弔問客接待費等は損害として認めない」と記載されています。

 香典返しが損害として認められていないのは,一見被害者にとっては不利に見えますが,反面受け取った香典が損害額から差し引かれない運用が取られていますので,実際には香典返し分は香典から填補されると考えられます。

名古屋地判平成25年2月27日自保ジャーナル1897号111頁


(ウ) 判断
 原告らが請求する葬儀費用等には,香典返しや弔問客接待費等,本件事故による損害と認められないものが含まれている。亡◯の年齢等を加味し,本件事故と相当因果関係を有する葬儀費用等として,墓碑建立費を含め150万円を認めるのが相当である。


 

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