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嗅覚(・味覚)の障害で後遺障害等級が認定されたのですが、逸失利益は認められるのでしょうか?

2019.08.01

嗅覚・味覚の後遺障害

 嗅覚・味覚の後遺障害は後遺障害別等級表に規定されていませんが,別表第2備考⑥を適用することにより,各等級の後遺障害に相当するものについては当該等級の後遺障害とされ,12級相当又は14級相当の後遺障害等級が認定されています。

嗅覚の後遺障害

後遺障害等級 後遺障害認定基準
別表第2備考⑥を適用
12級相当
嗅覚脱失
別表第2備考⑥を適用
14級相当
嗅覚の減退

味覚の後遺障害

後遺障害等級 後遺障害認定基準
別表第2備考⑥を適用
12級相当
味覚消失
別表第2備考⑥を適用
14級相当
味覚減退

嗅覚・味覚の後遺障害による労働能力の喪失

 加害者側の保険会社から,味覚は労働能力に影響せず,逸失利益は否定されるとの主張がなされ,争いになることがあります。

 過去の裁判例では労働能力喪失を否定するものと肯定するものに分かれていますが,性別,年齢,減収の程度および嗅覚・味覚障害の職業に対する具体的影響などの事情を考慮し,特に職業への影響を重視して判断される傾向にあります(片岡武裁判官の講演録「労働能力喪失率の認定について(交通事故による損害賠償の諸問題Ⅲ349頁)」)。

 まず,調理師,寿司職人,溶剤を使用する職人等については,嗅覚・味覚は味付けや材料の見極め等に重要な働きをするため,自賠責の労働能力喪失率にとらわれることなく,障害の支障の実態に合わせた高い数値の喪失率を認めることができると指摘されています(同講演録349頁)。

 次に,主婦の場合でも,料理等の家事労働に重大な支障を生じるから,嗅覚脱失及び味覚脱失は少なくとも12級の労働能力喪失率14%を認めるのが相当であり,嗅覚と味覚の両方を脱失した場合には併合11級として労働能力喪失率20%を認めて良いと指摘されています(同講演録349頁)

 一方,嗅覚や味覚の職業に対する影響がない場合には,労働能力の喪失は認められないことになります。

 例えば,東京地判平成11年5月25日交通事故民事裁判例集32巻3号804頁では,哲学教師を志望する被害者が嗅覚脱失の後遺障害を負った事案について,哲学の教師としての活動に嗅覚脱失が具体的な影響を及ぼすものとは認定できないとして,労働能力喪失が否定されています。

 また,労働能力喪失期間については,嗅覚・味覚障害が発生した機序(メカニズム)によって回復可能性が異なることから,具体的事件がどの類型に当てはまるのかを分析した上で労働能力喪失期間を検討することになると指摘されています(同講演録349~350頁)

東京地判平成11年5月25日交通事故民事裁判例集32巻3号804頁


 本件において原告は嗅覚全脱失という後遺障害により逸失利益が生じたと主張する。確かに,証人◯の証人尋問によれば嗅覚が人間生活に通常考えられているよりも一層重要な役割を果たしていることは認めることができる。しかし,これを肯定したとしても嗅覚の職業生活上の役割は視覚・聴覚とはおのずと異なり,嗅覚の脱失それ自体が逸失利益すなわち労働能力の喪失に一般的に結びつくものであることまで認めることはできない。嗅覚の脱失による労働能力の喪失を認めるためには被害者の職業との関連性が必要とされるものと考える。そして,原告は哲学の教師を志望していてこれに関連する職業に就く可能性が極めて高いと認められるが,証人△の証言によっても哲学の教師としての活動に嗅覚の脱失が具体的な影響を及ぼすものと認定することはできない。したがって,本件においては原告が嗅覚の脱失によって労働能力の喪失したものと認めることはできない。


 

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