事故で車両に搭載していたカーナビが壊れたのですが、修理代や購入代金を請求できるのでしょうか?

車両の装備品の損害

 交通事故でカーナビやテレビなどの車両の装備品が損傷した場合,事故と相当因果関係のある範囲で損害として認められています。

 もっとも,例えば,オートガイド自動車価格月報(通称「レッドブック」)には,エアコンの評価やナビゲーションの加算評価の項目があり,車両が全損となった場合,保険会社がカーナビなどの車両の装備品の損害も含んで車両時価額を算出していることもあります。

 修理可能の場合には修理費用が損害となります。

 一方,修理不能の場合でも,購入代金がそのまま損害として認められるわけではありません。

 事故時における装備品の価値が損害賠償の対象となりますので,認められる損害は,事故時の装備品の価格(時価額)と装備品の取付費用に限られています。

 また,車両本体の場合と同様に,修理費用が時価額及び取付費用を上回る場合には,経済的全損として時価額及び取付費用の合計額が損害の限度となります。

 その他の場合としては,車両自体が全損でも,装備品の損傷がなく,取り外して流用可能であれば,移設費用のみが損害になると考えられます。

 全損時の時価額評価については,中古品がある場合はその販売価格が,中古品がない場合には減価償却した価格が参考とされています。

 例えば,東京地判平成8年10月30日交通事故民事裁判例集29巻5号1582頁では,事故車に装備されていたカーナビ,VTR,アンテナ,CDチェンジャーが修理不能となって減価償却後の価値が損害と認められ,カセットデッキやテレビについては修理代金が損害と認められています。

 また,同判決では,装備等取付工賃や車両コーティング費用についても,本来的には装備品や車両の価値の一部を構成するものであるとしつつも,減価償却後の価値が損害と認められています。

東京地判平成8年10月30日交通事故民事裁判例集29巻5号1582頁


2 原告車の装備等の損傷 八六万〇八七七円
(一) SONYナビゲーション NVX-1は、平成四年九月一八日に二三万三〇〇〇円で購入して、原告車に装備する前は他車に装備し、その後に原告車に装備していたが、本件交通事故により修理不能となった。
 したがって、平成四年九月一八日(購入日)から平成五年一〇月九日(本件交通事故日)までの時の経過を考慮すると、SONYナビゲーション NVX-1は、本件交通事故当時、次の数式のとおり、一九万一〇六〇円であったと考えられる。
     233,000-233,000×0.9×0.2=191,060
(二) SONY VTR SVX-20、ニシコリダイバーシティアンテナ(四本購入で、一本四〇〇〇円である。なお、本件交通事故により損傷したのが二本であることは、原告の本人調書五五項のとおりである。)、SONY CDチェンジャーCDX-A11は、平成五年六月四日に合計一三万六五七八円で購入して、原告車に装備していたが、本件交通事故により修理不能となった。
 したがって、平成五年六月四日(購入日)から同年一〇月九日(本件交通事故日)までの時の経過を考慮すると、SONY VTR SVX-20、ニシコリダイバーシティアンテナ、SONY CDチェンジャーCDX-A11は、本件交通事故当時、次の数式のとおり、一二万〇六三七円である(なお、ニシコリダイバーシティアンテナ二本は、損傷していないから、その分の代金八二四〇円を一三万六五七八円から控除する。)。
  (136,578-8,240)-(136,578-8,240)×0.9×0.2×4/12=120,637

(五) 装備等取付工賃(二〇万円)は、平成五年六月四日、SONYナビゲーション NVX-1、SONY VTR SVX-20、ニシコリダイバーシティアンテナ、SONY CDチェンジャーCDX-A11、SONYカセットデッキXR-747、ナショナルテレビを原告車に取り付けた際の費用であり、本来的には右各装備の価値の一部を構成するものであるから、右各装備の価値を考える際に考慮すべきものではあるが、便宜上ここでその価値を判断する。
 すなわち、装備等取付工賃に係る価値は、本件交通事故当時、平成五年六月四日から同年一〇月九日(本件交通事故日)までの時の経過を考慮すると、次の数式のとおり、一八万八〇〇〇円となる。
     200,000-200,000×0.9×0.2×4/12=188,000
(六) ポリマーシーク加工(三万〇九〇〇円)は、平成五年八月ころ、原告車に施した費用であり、本来的には原告車の価値の一部を構成するものであるが、便宜上ここでその価値を判断する。
 すなわち、ポリマーシーク加工に係る価値は、本件交通事故当時、平成五年八月から同年一〇月九日(本件交通事故日)までの時の経過を考慮すると、次の数式のとおり、三万〇一三〇円である。
     30,900-30,900×0.9×0.166×2/12=30,130

(八) SONY カセットデッキ XR-747、ナショナルテレビは、本件交通事故当時、原告車に装備されていたが、本件交通事故により損傷をうけた。その修理代金は、合計一万三一〇〇円である。


 

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