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事故がなければ貰えたであろう退職金は請求できるのでしょうか?

2019.05.17

退職金差額とは?

 退職金制度のある会社に勤めていた被害者が事故で退職した場合に,退職時に実際に受け取った退職金の額と,定年まで勤めたときに得られたであろう退職金の額との差額が問題になることがあります。このような損害を退職金差額と呼んでいます。

 まず,退職金差額請求については,死亡事案において認められた判例(最三小判昭和43年8月27日民集22巻8号1704頁)があります。

 具体的にどのような場合に退職金差額が交通事故の損害として認められるかですが,川﨑直也裁判官の講演録「退職金差額請求について」(平成24年版赤い本下巻収録)で,以下のような要件が整理されて述べられています。

(1)退職金制度があること

 退職金制度がなければ,退職金差額の請求はできません。就業規則の退職金規程等があり,退職金を支給する制度があることが前提となります。

(2)事故による受傷と退職との間に因果関係があること

 死亡事案や労働能力喪失率が100%である事案では通常問題になることはなく,労働能力喪失率79%以上(後遺障害1~5級)といった重度の後遺障害の場合にも,従事可能な職務が非常に限定されることから,退職との因果関係が認められるのが一般的です。

 一方,後遺障害の程度が重度とまでは言えない場合については,次の①~③の要件を全て満たすときに限って因果関係が認められるべきで,特に労働能力喪失率20%以下(後遺障害11~14級)の軽度の後遺障害事案では,因果関係を肯定するのは難しいと指摘されています。

①後遺障害の内容・程度が被害者の職務に直接関連している

② ①の影響が強いために,職務を継続するのが困難

③被害者の職種及び勤務先の状況から配置転換等によって退職を回避するのが困難

(3)定年退職まで勤務を継続する蓋然性及び退職金が支給される蓋然性があること

 被害者の年齢,職歴,現在の勤務先の勤続年数,定年退職までの期間,勤務先の企業規模,経営状況,退職金支給実績等を考慮して判断されます。

 勤続年数が長く定年間近である場合には企業規模にかかわりなく認められる傾向にあります。

 また,勤務期間が短かい若年者であっても,新卒入社後からずっと勤めていて勤務先との結びつきが強く,勤め先が大企業・公務員などで安定していれば,勤務継続や退職金支給の蓋然性が認められやすいと考えられます。

 一方,勤続年数が短く,転職歴が相当程度あるような場合には,蓋然性が否定される傾向にあります。

退職金差額の計算方法

 定年時に支払われるであろう額から中間利息を控除し,さらに実際に受け取った退職金の額を差し引いたものが退職金差額の損害となります。

 死亡事案で退職金請求を認める場合に,さらに生活費控除をするかどうかは裁判例で見解が分かれています。

 計算式にあてはめるとマイナスになってしまう場合は,退職金差額の損害自体が発生していないことになります。

 一般に,退職までの年数が長い場合には,②のライプニッツ係数が小さくなり,退職金差額の損害が認められにくいといえます。

計算式:①✕②-③

①定年まで勤めた場合に支払われる退職金の額

②「定年年齢-死亡又は症状固定時年齢」の年数に対応するライプニッツ係数

※例えば,定年年齢60歳,症状固定時50歳なら,その差10年に対応するライプニッツ係数(下4桁)は0.6139になります。

③受け取った退職金の額

退職金差額請求の注意点

 一般の企業の定年年齢は60~65歳くらいが多いと思いますが,定年を考慮せずに就労可能年数の67歳までで逸失利益を計算して請求する方が高額になり,退職金差額を請求する意味が無い場合もあります。

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