過失割合はどのように決まるのでしょうか?

過失割合の決め方

 交通事故において、加害者だけでなく被害者にも「過失」(=不注意)があった場合、加害者と被害者が追う過失の割合を「過失割合」と言い、この過失割合に基づいて、加害者が被害者に対して支払う損害賠償額を減額するルールを「過失相殺」といいます。

 この「過失割合」は、実務上、判例タイムズ社「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」に記載された、問題となる交通事故の態様や類型によって定められた基準が参照されています。

 「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」には、起こり得る交通事故の類型として338件の類型が挙げられていますが(基準の改訂ごとに内容より件数は変更されます)、問題となっている交通事故が基準のどの類型に近いかを調べ、交通事故の状況から、基準に基づいて基本的な過失割合が認定されます。そしてさらに交通事故当時の状況や事情から「修正項目」に基づいて調整が行われ、過失割合が認定されるのが実務の一般的な流れです。

具体的事例

 上記の考え方に基づいて具体的な事例に当てはめてみると、以下のようになります。

交通事故のケース

 信号機のある交差点で、自転車と自動車の出会いがしらの衝突事故。
 この時、自転車側が黄色信号で直進し、自動車が赤信号で直進していたケース。

過失割合の考え方

  • 上記の類型(237図)の過失割合の「基本割合」によると、自転車側:自動車側の過失割合は10:90とされているので、自転車側の過失が10%、自動車側の過失が90%という事になります。
  • この事故が、自転車側が赤信号に代わる直前に交差点に進入した場合は5%過失がプラスされるといった修正要素が加えられます。

算定される過失割合

  • 上記のような事情があった場合、自転車側の過失が15%(10+5)、自動車側の過失が85%(90-5)となります。

基本事例以外のケース

 しかし、上記のような基本事例に当てはまらないケースも少なくありません。

 具体的な検討方法については、まずは問題となっている事故に近い類型のものがあるかどうかを確認し、もしあれば当該類型の過失割合や修正要素を参考に検討していくことになります。

 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準に掲載されている近い類型も見当たらないような非典型事故については、類似の事故態様の裁判例における判断を参考にしながら過失割合を考えることになります。

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