自転車の並走の事情は、過失割合の判断においてどの程度考慮されるのでしょうか?

自転車の並走に関する法規制

 街中で自転車で並走する学生等を見かけることがありますが,自転車も軽車両として道路交通法の適用を受けるところ,同法19条では「軽車両は、軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。」との定めがあり,自転車の並走は禁止されています。

 もっとも,普通自転車に限り,例外的に「並進可」の標識で指定されている区間では2台までは並んで走ることが許されています(3台以上は禁止。道路交通法63条の5)。

 道路交通法19条違反については,2万円以下の罰金又は科料が法定刑として定められています(道路交通法121条1項5号)。

自転車の並走の事情の考慮

 過失割合の判断については,実務上,別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(以下,「別冊判タ」といいます)に記載された基準が参照されています。

 検討の流れとしては,まずは,問題となっている交通事故が別冊判タに掲載された基準のどの類型に近いかを調べます。

 別冊判タに記載のある事故状況である場合,当該基準の基本割合をもとに,修正要素の有無を検討することになります。認定基準にない事故類型の場合,掲載されている近い類型の基準の過失割合を参考に修正を加えるという考え方が取られています。近い類型の基準すら掲載されていない非典型事故の場合には,類似の事故態様の裁判例における判断を参考にしながら過失割合を検討することになります。

 修正要素には,別冊判タの各基準毎に明記されているものもあれば(例えば,信号機により交通整理が行われていない交差点において,対抗右折車と直進車が衝突した類型の基準114では,対抗右折車の早回り右折や大回り右折の事情が直進車の-5%の修正要素として明記されています),問題となっている交通事故の状況から,著しい過失や重過失に該当するかを個別に検討する必要があるものもあります。

 そして,別冊判タ全訂第5版133頁や388頁には,自転車の著しい過失の例として,「並進」が挙げられており,自転車の並進の事情は自転車の著しい過失の修正要素として考慮することになります。

 ただし,自転車の著しい過失がどの程度の影響するかについては,基準により著しい過失の評価に5%~10%の幅があるため,各基準に問題となっている交通事故を当てはめた後に判断することになります。

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