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事故前年に開始した新規事業の収支が赤字である自営業者につき、事故直近2ヶ月が黒字に転じていること等から賃金センサスをもとに逸失利益が算定された事例

2019.09.16

大阪地判平成24年11月27日交通事故民事裁判例集45巻6号1356頁

争点

 事故前年9月にミニコミ誌の制作事業を開始したものの,事故当年7月までの収支が赤字であった自営業者の基礎収入が争点となりました。

判決文抜粋


エ 死亡逸失利益 5358万3551円
(ア) 前記争いのない事実等に加え,本件証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
 ◯は,平成15年2月から平成19年8月31日までの間,新聞販売店を経営し,同年9月1日からは,ミニコミ紙の制作事業を行っていた。その所得額は,平成17年分が685万円,平成18年分が1044万円,平成19年分が722万0491円であった。また,◯は,原告△4の下で,新聞配達業務に従事していたところ,その給与は,平成20年5月分が8万3417円,同年6月分が5万8619円,同年7月分が5万9033円であった。上記ミニコミ紙制作事業の収支を,平成19年9月から平成20年7月までの11か月間分でみると,439万4109円の赤字であるが,同年6月分は61万7829円,同年7月分は30万9512円の黒字であった。
 ◯は,本件事故当時,原告△1及び原告△2と同居していた。原告△1は,平成19年8月31日までは,◯が経営していた新聞販売店の従業員として,同年9月末以降は製パン会社のパート従業員として勤務し,その所得は,同年分が420万0695円,平成20年分が79万0024円であった。原告△2は,平成19年12月末までは,コンビニエンスストアのアルバイトとして勤務し,その同年分の所得は150万5768円であり,平成20年中は無職であった。原告△3は,平成20年7月ころまでは,◯と同居していたが,その後一人暮らしを始めた。原告△3は,平成19年8月31日までは,◯が経営していた新聞販売店のアルバイトとして,同年9月ころからは,スーパー銭湯にアルバイトとして勤務し,その所得は,平成19年分が266万1770円であり,平成20年分が186万0675円であった。
(イ) 死亡逸失利益の算定に当たり,その基礎収入は,原則として,事故時の実収入額によるべきところ,◯は,本件事故の前年に新規事業を始めており,当該収入は今後増加する見込みがあったと認められること,平成17年ないし平成19年における◯の平均収入額は,817万0163円であり,平成20年の賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計・男子労働者年齢別(40歳ないし44歳)平均賃金647万2100円を相当程度上回っていることを考慮すれば,◯の死亡逸失利益を算定するに当たり,その基礎収入は,上記平均賃金を採用することが相当である。
 生活費控除率は,原告ら家族の稼働状況や生活状況等を考慮すると,40パーセントとするのが相当である。
 したがって,基礎収入を647万2100円とし,生活費控除率を40パーセントとし,労働能力喪失期間を67歳までの24年とし,ライプニッツ方式により年5分の割合による中間利息を控除して(ライプニッツ係数13.7986),◯の死亡逸失利益を算定すると,以下のとおり,5358万3551円となる。
 647万2100円×(1-0.4)×13.7986=5358万3551円


解説

 本件事故の被害者は事故前年9月にミニコミ誌の制作事業を開始しているところ,事故当年7月までの収支は439万4,109円の赤字でした。

 形式的に見ると基礎収入額が0円と認定される可能性すらありそうですが,収入が増加傾向にあり,事故直近2ヶ月は黒字に転じていることや,ミニコミ誌制作事業を開始するまでに経営していた新聞代理店の収入が年齢別平均賃金を相当程度上回っていることを考慮し,年齢別平均賃金の収入を得る蓋然性があるとして,当該平均賃金を基礎収入として逸失利益を算定しました。

 本判決は,新規事業開始から間もない自営業者について,増収見込みを考慮して基礎収入を算定した事例の一つとして参考になると思われます。

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