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自営業者について、廃業による損害が認められた事例

2019.04.23

高松高判平成13年3月23日自保ジャーナル1404号1頁

争点

 事故後に廃業した美容院経営者について,事故から2年前の開業時に支出した費用が損害として認められるかが争点となりました。

判決文抜粋


前記認定事実によれば,被控訴人は,本件事故後も従業員を雇用して美容室の経営を継続していたが,自らが美容師として就労できないことから,結局平成10年5月ころに至って廃業を余儀なくされたものと推認される。控訴人は,被控訴人は本件事故前から経済的に破綻状態にあったから,本件事故と廃業との間には因果関係がないと主張する。しかし,乙16号証によれば,被控訴人は,本件事故前から賃料及び仕入代金等を滞納していたことが認められ,開業時の借入金債務の返済等の負担が大きかったことは被控訴人が自認しているものの,前記美容院が,本件事故前に経常収支がマイナスとなる赤字経営であったと認めるに足りる証拠はない。赤字経営でないとすると,債務返済のためにも,被控訴人は,本件事故に遭わなければ美容院の経営を継続していたと推認されるから,控訴人の前記主張は採用できない。被控訴人が開業時に支出した前記費用は,主に内外装工事費や取り外して搬出することが困難な諸設備の設置工事費用であること,賃貸借契約の内容からして,被控訴人が有益費償還請求権等を行使して前記投下資本の回収を図るのは困難と解されることのほか,開業時から廃業までの期間経過による内外装及び諸設備の劣化,陳腐化等の諸事情に照らすと,被控訴人が開業時に支出した前記費用564万6200円の約5割に相当する280万円が本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。


解説

 本件では,加害者から赤字経営のため,事故と廃業との間に因果関係がないと主張されましたが,証拠不十分で認定されず,赤字経営でないなら,開業時の借入金などの債務返済のために美容院を継続していたと推認されるとして,開業時に支出した費用の約5割に相当する280万円を事故と相当因果関係のある損害と認めました。

 損害の割合を判断するにあたっては,費用が内装工事費や搬出することが困難な諸設備の設置工事費用であり,投下資本の回収を図るのが困難であることや,開業から廃業までの期間経過による内外装及び諸設備の劣化などが考慮されています。

 本件は,事故による廃業の損害が認められた事例の一つとして,参考になると思われます。

 

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