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高次脳機能障害5級2号の後遺障害を負った主婦について、1日3,000円の将来介護費が認められた事例

2019.08.31

大阪地判平成25年9月26日交通事故民事裁判例集46巻5号1286頁

争点

 高次脳機能障害5級2号の後遺障害(他には右肩関節機能障害10級10号,右股関節・右膝関節の機能障害12級7号があり,併合4級の認定)を負った61歳主婦について,将来介護費が認められるかが争点になりました。

判決文抜粋


(3) 将来介護の必要性と金額
ア 原告の主張
(ア) 原告については,高次脳機能障害の側面からも,また関節機能障害の観点からも,将来介護が必要である旨の医学意見書がある。
(イ) そして,既に述べたような原告の症状に照らすと,将来にわたって見守りや声かけ,介助等を含む介護が必要である。そして,原告の夫は体調を崩しており,原告の長女も長い間介護の負担を負うこともできず,今後職業付添人の援助を受けることは必要不可欠である。
(ウ) そうすると,原告について今後少なくとも日額5000円相当の将来介護の必要性があるというべきである。
イ 被告の主張
(ア) 元々5級の後遺障害は将来介護の必要性を想定されていないものである。また,原告の日常生活動作は自立しており,一定程度の家事を行うことも可能である。仮に原告について将来介護が必要であるとしても,その内容は家族による看視で足りるものであり,付添が必要であるとしても,外出時に限られる。
(イ) そうすると,将来介護の必要性は認められないし,仮に認められるとしても,金額はせいぜい日額1000円までであるというべきである。

第3 当裁判所の判断

(1) 労働能力喪失率
ア 高次脳機能障害の程度
(ア) 上記によれば,原告は事故後,調理や買い物等において手順等を考えることが困難となっており,また感情制御にも著しい不具合が生じているものと認められるところであり,感情制御を中心とした社会行動能力及び手順検討を中心とする問題解決能力については,その過半が失われている状態にあるといえ,また意思疎通能力や持続力等についても相当程度の影響が生じているものと認められる。
(イ) したがって,原告の高次脳機能障害の程度は後遺障害5級相当を下回るものではないと認められる。
イ 四肢機能障害との関係
(ア) 上記によれば,原告の右肩,右膝,左股関節にはそれぞれ大きな可動域制限があるものと認められ,またそれによって歩行や階段昇降に大きな支障が生じているものと認められる。

 6 将来介護の必要性と金額
(1) 上記によれば,原告は一定程度の生活は送れる状況であり,常時介護を必要とするわけではないが,外出時や家事を行う時,入浴時あるいは階段の昇降等の場面において,一定の介助や見守り等を必要とするものと認められ,将来介護の必要性は認められる。
(2) その症状内容に照らすと,今後職業付添人が必要となる蓋然性については認められないが,将来にわたって◯等近親者による介護の必要があり,1日あたり3000円相当の損害が発生しているものと認められる。


解説

 自賠責施行令別表で介護を要する後遺障害として明示されているのは別表第1の1級(常時介護)及び2級(随時介護)のみですが,裁判実務ではこれら以外の後遺障害についても,介護の必要性がある場合には将来介護費が認められています。

 もっとも,常時介護を必要としない場合には,介護の必要性の程度,内容によって減額されることがあるほか,身体介護を要せず,看視,声掛けで足りる場合は,一般に身体介護よりも肉体的な負担が軽いことから,身体的介護が必要な場合よりも低額の近親者将来介護費が認定されています。

 本判決は,外出時,家事を行う時,入浴時,階段の昇降等の場面において一定の身体的介助や見守り等が必要だと認定した上で,1日あたり3,000円の近親者将来介護費を認めました。

 他の裁判例を見ますと,高次脳機能障害5級2号で認められている将来介護費の範囲はおおよそ2,000~3,000円ですが,本件で3,000円の将来介護費が認められたのは,見守りだけでなく,関節機能障害の観点から一定の身体的介護が必要であることも考慮されたものと考えられます。

 将来介護費については,後遺障害等級3級以上といった重篤な後遺障害が残存する場合に認められることが多く,高次脳機能障害5級2号の場合には当然に認められるわけではありません。

 本判決は,高次脳機能障害5級2号の認定事案において将来介護費が認められた事例の一つとして,参考になると思われます。

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