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外貌醜状7級の後遺障害を負った6歳の児童(女)について、67歳まで14%の労働能力喪失が認められた事例

2019.08.20

横浜地判平成21年9月8日自保ジャーナル1815号

争点

 外貌醜状7級の後遺障害を負った6歳の児童(女)について,労働能力喪失が認められるかが争点となりました。

判決文抜粋


1 請求原因

(エ) 後遺症による逸失利益 1485万1351円
 原告◯は,本件事故により女子の外貌に著しい醜状を残す後遺障害(7級12号)を負った。
 原告◯は外貌の著しい醜状によって,将来選択できる職業,職場の範囲が著しく制限される蓋然性が高く,労働能力の一部を喪失し,それによって将来の稼働収入の喪失が生じると認められる。
 逸失利益の算定にあたり,症状固定時6歳であるから,①基礎収入は男女産業計全年齢平均賃金の489万3200円が相当であり,②労働能力喪失率は7級の標準喪失率56%に対して30%が相当であり,③労働能力喪失期間は,就職時の職種や職場の制限が転職や再就職の際にも影響し,結局生涯の賃金格差となってあらわれるから稼働可能年齢である67歳まで認められるべきである。

2 請求原因に対する認否

カ 請求原因(4)ア(エ)は争う。

 外貌の醜状の存在自体は身体的機能に支障を生じさせるものではなく,これによって,原告◯の労働能力の一部が喪失したということはできない。原告◯は,将来選択できる職業,職場の範囲が著しく制限される蓋然性が高く,それによって将来の稼働収入の喪失が生じるとしているが,女性の社会進出が促進された現在の社会情勢のもとでは,女性が選択できる職業は広範に及び外貌が重視される職種はむしろ限定的な範囲にとどまり,原告◯が主張するように職場の範囲が著しく制限されることはない。症状固定時6歳の原告◯が稼働するようになる年齢(18歳ないしはそれ以上)においては醜状痕の外貌に対する影響も減少していると考えられることからすれば,原告◯の主張する将来の就職等に生じる制約というのは抽象的な可能性の域をでるものではない。
 よって,本件事故による逸失利益は認められない。

       理   由

 原告◯の顔面醜状痕は,それ自体が同人の身体的機能の障害をもたらすものではないとしても,その部位や形状等をみると人目につくこと(ただし,前髪をおろせば線状痕の一部は隠れる様子である),特に幼少である同人にとっては今後の対人関係において不利益を生じさせたり,顔面醜状痕を気にして消極的になるなど性格形成にも影響を及ぼす可能性も心配されるほか,接客業や人の面前または人目につく場所で働くことが要求される職業への就職が制限されるなど,選択できる進路や職業の範囲を狭めたり,就職機会の困難を来す高度の蓋然性が認められる。
 したがって,原告◯の顔面醜状痕による労働能力の一部喪失が認められ,かつ,同人の将来の収入も,それに応じて減少すると予測するのが相当であり,平成19年賃金センサス第1巻第1表企業規模計・産業計・男女計全労働者の年間平均給与額金488万2600円を基礎収入と認めて,後遺障害による労働能力喪失率は就労可能年齢である18歳から67歳まで14%とみるのが相当である


解説

 外貌醜状はそれ自体が身体的機能を左右するものではないため,労働能力喪失が争われることが多い後遺障害の類型の一つです。

 過去の裁判例については,醜状障害の具体的な内容・程度,被害者の性別,年齢,職業等を考慮した上で,以下のような取扱いを行っている傾向があると指摘されています(河邉義典裁判官の講演録,東京三弁護士会交通事故処理委員会「新しい交通賠償論の胎動-創立40周年記念公演を中心として」ぎょうせい2002 9頁など)。

  1. 醜状痕の存在のために配置転換を受けたり,職業選択の幅が狭められたりするなど労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれがある場合には一定割合の労働能力喪失を肯定して逸失利益を認める。
  2. 労働能力への直接的な影響は認めがたいが,対人関係や対外的な活動に消極的になるなどの形で,間接的に労働能力に影響を及ぼすおそれがある場合には,概ね100万~200万程度の額で慰謝料増額事由として考慮する。
  3. 直接的にも間接的にも労働能力に影響を与えないと考えられる場合には,慰謝料も基準どおりとして増額しない。

 本判決は,特に幼少である被害者にとっては今後の対人関係において不利益を生じさせたり,顔面醜状痕を気にして消極的になるなど性格形成にも影響を及ぼす可能性も心配されるほか(2),接客業や人の面前または人目につく場所で働くことが要求される職業への就職が制限されるなど,選択できる進路や職業の範囲を狭めたり,就職機会の困難を来す高度の蓋然性が認められる(1)として,上記1と2の理由の両方の影響を指摘し,就労可能年数である67歳までの労働能力喪失を認めました。

 なお,自賠責の後遺障害等級及び労働能力喪失率表どおりだと労働能力喪失率は56%になりますが,本判決では一定割合の14%が認定されています。

 本判決は,未就労の年少者について,対人関係の不利益や将来の就職への支障から労働能力喪失を主張する際に参考となるように思われます。

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