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17年以上前の交通事故の受傷で同一箇所に14級10号(現14級9号)の認定を受けていたことを理由に自賠責で非該当と判断された事案につき、14級9号の後遺障害が認められた事例

2019.08.27

東京地判平成25年6月24日(平成24年(ワ)第6674号)

争点

 17年以上前の交通事故で同一箇所に局部の神経症状で14級10号(現14級9号)の認定を受けていたことを理由に自賠責で非該当と判断された事案につき,14級9号の後遺障害が認められるかが争点となりました。

判決文抜粋


 1 請求原因

(3) 本件事故による被害の程度
ア 傷病名
  原告は,本件事故の結果,頚椎捻挫等の傷害を負った。
イ 治療経過
 原告は,前記傷害を治療するため,平成23年2月25日から9月3日まで通院した(通院期間191日,通院実日数139日)。
ウ 後遺障害
  原告は,前記傷害について,平成23年9月3日に症状が固定したところ,頚部痛等の神経症状が残存している。

オ 後遺障害による逸失利益 74万8874円
 345万9400円×0.05×4.3295≒74万8874円

2 請求原因に対する認否

 損害保険料率算出機構は,原告の後遺障害について非該当と判断している。仮に原告に14級9号に該当するような後遺障害が残存しているとしても,それは平成5年4月7日に発生した交通事故による後遺障害が残存しているものであり,本件事故による新たな後遺障害は発生していない。

3 抗弁
 (1) 素因減額
 原告は,平成5年4月7日に発生した交通事故による頚部痛,上下肢しびれ感などについて後遺障害等級14級9号の認定を受けており,過去の受傷は本件事故による損害の拡大に寄与している。

       理   由

(キ) 損害保険料率算出機構は,原告の症状が後遺障害には該当しない旨判断したところ,その理由として「頚椎捻挫後の頚部運動痛,頭痛,両手シビレ等の神経症状については,提出の画像上,本件事故による骨折等の器質的損傷は認められず,後遺障害診断書上も,神経学的異常所見に乏しいこと等から,他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉え難く,自賠責保険における後遺障害としては別表第二第14級9号を超える等級には該当しないものと判断されます。一方,平成5年4月7日発生の事故受傷に伴う頚部痛,上下肢シビレ感等の訴えについて,神経系統の障害として別表第14級10号(現,別表第二第14級9号)の認定がなされており,同一部位の障害として障害等級表上の障害程度を加重したものとは捉えられないことから,自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。なお,頚椎部の運動障害については,提出の画像上,その原因となる骨折,脱臼等は認められないことから,自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。」と述べた。
 ウ 以上の事実関係によると,原告は,本件事故により頚椎捻挫の傷害を負い,本件事故の直後から症状固定に至るまで,一貫して頚部痛,頭痛等の症状を訴え続け,継続的に治療を受けていたものであり,症状固定時に残存している頚部痛,頭痛等の神経症状は,他覚的所見は乏しいものの頚椎捻挫によるものと医学的に説明が可能で,将来においても回復が困難と見込まれるから,本件事故により局部に神経症状を残しているというべきである。
 これに対し,被告は,「仮に原告に14級9号に該当するような後遺障害が残存しているとしても,それは平成5年4月7日に発生した交通事故による後遺障害が残存しているものであり,本件事故による新たな後遺障害は発生していない。」と主張し,前示のとおり,原告は,平成5年4月7日発生の事故による受傷に伴う頚部痛,上下肢シビレ感等について,自動車保険料率算定会において,神経系統の障害として14級10号の認定を受けているが,当該事故による後遺障害が局部に神経症状を残すものにすぎない一方,当該事故が本件事故から17年以上前に発生したものであることに照らして,被告の主張は,採用することができない。

 抗弁(1)のうち,原告が平成5年4月7日に発生した交通事故による頚部痛,上下肢しびれ感などについて後遺障害等級14級9号の認定を受けたことは,当事者間に争いがないところ,被告は,過去の受傷が本件事故による損害の拡大に寄与していると主張する。しかしながら,前示のとおり同日に発生した事故による後遺障害は局部に神経症状を残すものにすぎない一方,当該事故は本件事故から17年以上前に発生したものであることに照らして,過去の受傷が本件事故による損害の拡大に寄与していると直ちに推認することは困難であり,他にこの点を認めるに足りる証拠はなく,抗弁(1)は理由がない。


解説

 自賠責施行令第2条2項は,「既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによつて同一部位について後遺障害の程度を加重した場合における当該後遺障害による損害については、当該後遺障害の該当する別表第一又は別表第二に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額から、既にあつた後遺障害の該当するこれらの表に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額を控除した金額とする。」と定めています。

 この規定から逆に,同一部位に生じた後遺障害が既存障害の等級よりも上位の等級に該当しない場合には,「同一部位の障害として障害等級表上の障害程度を加重したものとは捉えられない」として非該当とされる運用がとられています。
 損害保険料率算出機構は,17年以上前の事故で頸部に14級9号が認定されていたことを理由に,「同一部位の障害として障害等級表上の障害程度を加重したものとは捉えられないことから,自賠責保険における後遺障害には該当しない」として,非該当と判断しました。

 これに対し,本判決は,「損害保険料率算出機構は,原告の後遺障害について非該当と判断している。仮に原告に14級9号に該当するような後遺障害が残存しているとしても,それは平成5年4月7日に発生した交通事故による後遺障害が残存しているものであり,本件事故による新たな後遺障害は発生していない」との被告の主張を排斥し,同一部位について14級9号の後遺障害を認定しました。

 頚椎捻挫による14級9号のむち打ち症については,後遺症の永久残存性はないとして,労働能力喪失期間5年が裁判実務における目安となっています(なお,大阪地裁の基準が記載されている交通事故損害賠償額算定のしおりの20訂版では3~5年(19訂版以前は2~5年)が目安とされています)。

 そのため,判決文からは明らかではないですが,17年以上前の事故の際にも,労働能力喪失期間について多くとも5年程度しか逸失利益が認められていないだろうと推測されます。

 自賠責保険では画一的処理が行われているため,同一箇所についての14級9号の認定はおよそ期待できませんが,過去の事故から5年以上経過し,過去の事故の影響が影響がほとんど残っていないような状態であれば,本判決のように後遺障害等級14級9号の認定を受けることができる場合があります。

 また,本判決は,過去の事故を理由とする被告の素因減額の抗弁についても,「同日に発生した事故による後遺障害は局部に神経症状を残すものにすぎない一方,当該事故は本件事故から17年以上前に発生したものであることに照らして,過去の受傷が本件事故による損害の拡大に寄与していると直ちに推認することは困難であり,他にこの点を認めるに足りる証拠はな」いとして排斥しています。

 本判決は,加重障害に関する自賠責の運用と裁判所の判断が異なる事例の一つとして,参考になると思われます。

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