大阪・高槻市で交通事故に強い弁護士

弁護士との無料相談はこちら 0120-543-081
受付時間 平日 9:00-18:00

取締役に対する役員報酬の支払いが、会社の肩代わり損害として認められた事例

2019.08.08

横浜地判平成24年12月20日交通事故民事裁判例集45巻6号1548頁

争点

 事故に遭った取締役に支払った役員報酬が,原告会社の損害として認められるかが争点となりました。

判決文抜粋


ア 原告会社の主張

(ア) 原告◯への給与相当額の支払い 194万7945円
 原告◯は,本件事故により79日間休業しており,その間原告会社に対し労務を提供することができなかったが,被告らが原告◯に対し休業損害を支払わなかったことから,原告会社は,妻子のある原告◯の生活を案じて,この間の給与相当額194万7945円(900万円÷365×79日)を支払った。

イ 被告らの主張
 原告会社の損害は,間接損害であり,本件事故との間に相当因果関係が認められるかについては疑義がある。原告会社には従業員及びアルバイトが数名いたのであって,原告◯と原告会社との間にいわゆる経済的同一性は認められないから,企業損害が認められる基礎を欠く。また,原告会社においては,前々期,前期と対比して売上げは維持されており,売上げの減少があるとしても,景気変動の範囲内である。また,代替雇用によって原告会社の営業が継続され,経営者である原告◯の収入も含めて維持されたというべきであるから,仮に原告会社の損害が認められるとしても,代替労働費のみであり,原告◯の得た収入を二重に認めるべきではない。
第3 当裁判所の判断

イ 基礎収入について

そして,上記諸般の事情を考慮すると,原告◯の役員報酬のうち,労務対価に相当する金額は役員報酬額の8割に相当する720万円と認めるのが相当である。

3 争点2(原告会社の損害額)について
(1) 原告◯に対する役員報酬の支払について
 前記1認定のとおり,原告◯は,本件事故による傷害のため79日間休業したが,原告会社は,上記休業期間についても,従前どおり年収900万円を前提とする役員報酬を支払っている。これは,本来であれば,原告◯が被告らに対し直接請求できる損害を原告会社が肩代わりして支払ったものであり,本件事故との間に相当因果関係が認められる。
 原告◯の本件事故による傷害の程度及び治療の経過等を考慮すると,上記休業期間は必要かつ相当であると認められるが,前記2認定のとおり,原告◯の役員報酬額のうちの労務対価部分は720万円に限られるから,本件事故との間に相当因果関係が認められる原告会社の損害額は,以下のとおり155万8356円となる。
   720万円÷365×79日=155万8356円


解説

 本件は,原告会社唯一の取締役(従業員はパートの妻のほか,従業員1名,アルバイト3名)が交通事故に遭って休業したところ,原告会社が従前どおり年収900万円を前提とする役員報酬を支払った事案です。

 このように,休業中でも会社が役員報酬を支払った場合には,交通事故によって反射的に会社が損害を負ったと評価することができます。

 そして,その損害の内容は,直接の被害者である取締役について生じる休業損害が会社に転化したものと考えられます。

 なお,会社の取締役の場合,役員報酬のうちの労務対価部分のみが休業損害として認められています。

 なぜなら,利益配当部分については,休業によって失われないと考えられるからです。

 したがって,会社に転化した損害も,役員報酬のうちの労務対価部分に限られることになります。

 本判決は,原告会社が事故被害者である取締役に支払った年収900万円を前提とする役員報酬について,本来取締役が加害者に対して直接請求できる損害を原告会社が肩代わりして払ったものだとして,事故との間の相当因果関係を認めました。

 そして,取締役の年収900万円のうち,労務対価部分は720万円に限られるとして,720万円を取締役の基礎収入として算定した155万8356円が原告会社の損害として認定されています。

コラムの関連記事