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自営業者について、代替労働力の費用が損害として認定された事例

2019.05.07

東京地判平成25年7月16日 交通事故民事裁判例集46巻4号915頁

争点

 内科開業医が支出した代診費用が損害として認められるかが争点となりました。

判決文抜粋


(被告らの主張)

キ 代診費用
 否認する。
 原告は,代診費用を支払うことで診療を行い,収益を上げている。診療により収益を上げておきながら,一方で収益を考慮せずに人件費を請求するのであれば,不当に利益を得ることとなる。
 また,◯医師に支払われた賃金は平成19年分よりも平成20年分が低いので,代診費用が現に支払われたのか疑わしい。

第3 当裁判所の判断

(7) 代診費用 90万円
  証拠(甲42,776,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,◯医師に対し,平成20年6月4日から同年10月16日まで,本件クリニックにおける診療業務の一部の担当を依頼し,その代診費用として合計90万円を支払ったと認められる。
 原告は,本件事故の翌日から本件クリニックにおける診療業務に従事しているが,原告が本件事故により負った傷害の内容及び程度(前記(1)及び(2))に照らすと,ネックカラーが外れた平成20年8月18日まではもちろん,その後の一定期間においても,原告にとって,痛み等を抱えつつ,本件クリニックを受診する種々の患者に個々に対応し,診察や検査を行うという業務に従事し続けることは,相当の困難と労苦を伴ったであろうことは,容易に推認することができる。
 そうすると,平成20年6月から同年10月中旬までという本件事故から約4か月半の期間において,週1回程度(ほぼ木曜日),原告が自ら従事すべき診療業務の一部の代替を1回当たり5万円で他の医師に依頼し,本件クリニックの診療体制を維持することによりその収入の確保を図るということは,損害の拡大を防ぐという観点からも,なお相当性を有するものということができ,収入を確保するために余計に要した経費として,後記(9)の休業損害とは別に本件事故によって生じた損害であるということができる。
 したがって,◯医師に対する代診費用90万円の支払は,本件事故と相当因果関係のある損害であると認められる。


解説

 自営業者が受傷した場合,営業に穴を空けないため,人員を雇用したり,業務の委託などで支出を余儀なくされることがあります。

 本件は,減収から生じた休業損害とは別に,他の医師に診療業務の一部を依頼するために支出した費用を,損害の拡大を防ぐという観点からも相当性を有するとして,事故と相当因果関係がある損害として認めました。

 被害者がこのような代替措置を取らなれけば,減収による休業損害が拡大したことは容易に想像できます。

 被告らは,「診療により収益を上げておきながら,一方で収益を考慮せずに人件費を請求するのであれば,不当に利益を得ることとなる」と主張して争っていますが,被害者が損害の拡大を防ぐために代診費用を支出したことが被告らが支払うべき休業損害の減少に寄与した一方で,代診費用の支出が被害者の自己負担となれば,むしろ被告らが不当に利益を得ることになると言わざるをえません。

 本件は,休業損害とは別に代替費用が損害として認められた事例の一つとして参考になると思われます。

 

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