大阪地判 平成24年6月14日自保ジャーナル1883号150頁
争点
買い替え車両の車両本体価格に対する消費税全額が損害として認められるかが争点となりました。
判決文抜粋
(原告らの主張)
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b 買替車の車両本体価格に対する消費税 6万1935円
事故車が全損となった場合,車両を買い替えるのは通常のことであって,その買替車が新車となることも通常のことであるから,当該買替車の消費税相当額は,本件事故と相当因果関係のある損害とみるべきである。
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(被告の主張)
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b 買替車の車両本体価格に対する消費税 否認する
事故車の時価額を上回る価格の車両を購入した場合に,その消費税相当額が全額事故と相当因果関係を有する損害となるわけではないから,◯に生じた買替車の車両本体価格に対する消費税相当額の損害は,車両本体時価額60万9000円に対する消費税3万0450円である。
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第3 当裁判所の判断
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(イ) 買替車の車両本体価格に対する消費税 3万0450円
本件証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件事故により,原告車両が全損となり,代替車両が購入されたものと認められるところ,当該購入に要した消費税のうち,本件事故時の車両時価額に相当する車両本体価格に対する消費税の限度で,本件事故と相当因果関係のある損害とみるべきである。
これを算定すると,以下のとおり,3万0450円となる。
60万9000円×0.05=3万0450円
解説
事故のために車両が廃車になって新たに車両を購入しようとすれば,車両本体価格に対する消費税もあわせて支払う必要があります。この新たに購入する車両の車両本体価格に対する消費税も,事故がなければ支払う必要がないものですので,損害として認められています。
本件で原告は,買い替え車両が新車となることも通常のことだとして,新たに購入した新車の車両本体価格に対する消費税全額を損害として請求しました。
これに対し,大阪地裁は原告の主張を認めず,「購入に要した消費税のうち,本件事故時の車両時価額に相当する車両本体価格に対する消費税の限度で,本件事故と相当因果関係のある損害とみるべき」だと判断しました。
同程度の車両を調達できれば事故による損害は回復すると考えられますので,買い替え車両の車両本体価格に対する消費税についても,本判決のとおり,事故車の車両時価額に相当する限度で認めれば足りるということになります。
また,本判決の事例と異なり,買い替え車両の車両本体価格が事故車の車両時価額を下回る場合ですが,本判決の判旨は,買い替え車両の「購入に要した消費税のうち,本件事故時の車両時価額に相当する車両本体価格に対する消費税の限度で,本件事故と相当因果関係のある損害とみるべき」というものですので,事故車の車両時価額に対する消費税額ではなく,買い替え車両の車両本体価格に対する消費税額が損害となりそうです。
一方,本判決以外の先例として,東京地判平成22年1月27日交通事故民事裁判例集43巻1号48頁がありますが,同判決では,「同程度の車両を購入した場合には,これに消費税が加算されることを考えると,上記車両時価額の消費税分3万0900円についてもこれを相当因果関係のある損害と認めるのが相当である」として,「車両時価額(消費税分を含む。)」という損害項目の中で,事故車両の時価額の消費税分が事故と相当因果関係のある損害と認められています。
東京地裁平成22年判決のように,事故車の車両時価額の消費税分が事故と相当因果関係のある損害だと考えると,買い替え車両の車両本体価格が事故車の車両時価額を下回る場合であっても,事故車の車両時価額の消費税分が損害として認められることになると考えられます。