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役員報酬全額が労務対価部分として認められた事例

2019.07.10

大阪地判平成21年3月24日交通事故民事裁判例集42巻2号409頁

争点

 役員報酬の全額が労務対価部分として認められるかが争点となりました。

判決文抜粋


ア 原告らの主張

︙ 

b 死亡逸失利益
(a) 役員報酬分
 ◯は,生前,いわゆる民間車検工場である株式会社△(以下「△」という。)の代表取締役を務め,自ら車検業務に従事しており,本件事故の前年である平成17年の役員報酬の額は年額354万円であった。△は極めて小規模な会社であり,◯が受領していた役員報酬は,その全額が労働の対価に相当するものであった。◯の死亡時の年齢に鑑みれば,◯は,本件事故に遭わなければ8年間にわたって稼働する蓋然性が高かったといえる。また,上記役員報酬による収入についての生活費控除率は30パーセントとするのが相当である。よって,役員報酬分の死亡逸失利益は1601万5314円である。

イ 被告の主張

(ア) ◯の損害(葬儀費用,死亡逸失利益,死亡慰謝料)及び原告らの損害は全て争う。死亡逸失利益について,役員報酬は,そのうちの労働の対価部分のみが損害となり,その全額が損害となるものではない。

第3 争点に対する判断

 証拠及び弁論の全趣旨を併せ考えると,① ◯は,いわゆる民間車検工場として自動車の車検等を行うことを業とする△の代表取締役を務めていたこと,② △は◯,原告◯◯及び原告◯◯◯が役員を務め,従業員4名を含む総勢7名で運営されている小規模な会社であるが,1か月当たり150台前後の自動車の車検を行っており,本件事故当時,同社の業務は,業務に必要な機械の操作技術を有する◯が中心となって行っていたこと,③ △は,◯に対し,役員報酬として年額354万円を,原告◯◯に対し年額270万円をそれぞれ支払っていたほか,◯◯◯及び4名の従業員に対し,合計2001万0315円の給与及び賞与等の支給を行っていたこと,④ ◯は,老齢基礎年金として年額71万2600円の,老齢厚生年金として年額79万4400円の合計150万7000円の支給を受けていたこと,⑤◯には,本件事故当時,上記以外に△の店舗及び工場の家賃として,年額360万円程度の収入があったことがそれぞれ認められる。
 以上認定したとおり,△は,◯の家族を中心に運営されていた会社で,本件事故当時は,◯自身がその業務を中心となって行っていたというのであるから,前記認定の,◯が△から支給を受けていた役員報酬は,平成18年賃金センサス・産業計・企業規模計・男性労働者・学歴計の65歳以上の平均賃金が357万4900円であることとの比較においても,その全額が労働の対価であったとみるのが相当である。


解説

 役員報酬については,労務対価部分についてのみ損害算定の基礎とされます。

 労務対価部分の範囲は,一般に,会社の規模や営業状態,事故被害者である役員の職務内容・報酬額,他の役員や従業員の職務内容,報酬額等から判断されています。

 本件では,家族を中心に運営されていた小規模会社で,事故当時,代表取締役であった事故被害者自身が中心となって業務を行っていたことや,受け取っていた役員報酬が賃金センサスとの比較においても多額でないことから,役員報酬全額が労務対価部分と認められました。

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