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転居費用及び平均余命まで賃料差額の一部が損害として認められた事例

2019.07.09

東京地判平成28年2月25日交通事故民事裁判例集49巻1号255頁

争点

 転居費用及び賃料差額が損害として認められるかが争点となりました。

判決文抜粋


(原告◯らの主張)

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(サ) 賃料差額,転居費用 1659万2751円
 原告◯ら家族は,本件事故当時,賃貸マンション(賃料月額16万3000円)に居住していたが,平成24年3月15日,原告◯の介護を行うため,いわゆるバリアフリーの賃貸マンション(期間を同月から平成26年3月までとする定期建物賃貸借。賃料月額20万円)に転居し(以下,これを「1回目の転居」という。),平成26年2月26日,肩書住所地所在のバリアフリーの賃貸マンション(賃料月額23万5000円)に転居した(以下,これを「2回目の転居」という。)。
 1回目の転居に係る賃料差額は88万0600円((20万円-16万3000円)×714日÷30日),2回目の転居に係るそれは1530万7401円((23万5000円-16万3000円)×12か月×17.7169〔ライプニッツ係数〕)である。
 また,1回目の転居費用は20万4750円,2回目のそれは20万円である。

(被告らの主張)

 (サ) 賃料差額,転居費用
 少なくとも2回目の転居費用と本件事故との間に相当因果関係はない。また,① 賃料は当該物件に係る諸条件(築年数,耐震性,所在地,周辺環境,設備,間取り等)により決定され,必ずしもバリアフリーの賃貸マンションの賃料が非バリアフリーの賃貸マンションのそれより高額であるとはいえないこと,② 本件事故当時,原告◯ら家族が生活していた賃貸マンションの広さ(居住部分)は約35帖であるのに対し,1回目の転居先のそれは約53.9帖,2回目の転居先のそれは約41帖であることからすると,賃料差額と本件事故との間に相当因果関係はない。

第3 当裁判所の判断

 サ 賃料差額,転居費用 725万2218円
 証拠及び弁論の全趣旨によれば,① 原告△らは,本件事故当時,非バリアフリーの賃貸マンション(賃料月額16万3000円)に居住していたが,平成24年3月15日,原告◯の在宅介護を行うため,バリアフリーの賃貸マンション(期間を同日から平成26年3月31日までとする定期建物賃貸借。賃料月額20万円)に転居したこと(1回目の転居),② 原告△らは,平成26年2月26日,定期建物賃貸借の期間が満了することから,肩書住所地所在のバリアフリーの賃貸マンション(賃料月額23万5000円)に転居したこと(2回目の転居),③ 1回目の転居の費用は20万4750円,2回目のそれは20万円であることが認められる。
 原告◯の後遺障害の内容,程度等に照らすと,転居の必要性は否定し得ないものの,2回目の転居と本件事故との間に相当因果関係があるとまで認めるのは困難である。また,賃料は間取り,立地等の諸条件により異なるところ,上記の各マンションは,間取りも異なる上,立地条件も異なるのであって,単に賃料に差異があることのみから,賃料差額を本件事故と相当因果関係のある損害というのは困難である。シニア向けの分譲マンションは,同じ面積でも,一般の分譲マンションに比し,販売価格が2割程度高くなるとの指摘があることなどを総合考慮すると,本件事故と相当因果関係のある賃料差額相当分の損害は月額3万円とするのが相当である。
 そうすると,本件事故と相当因果関係のある賃料差額は704万7468円(3万円×12か月×19.5763〔ライプニッツ係数〕),転居費用は20万4750円とするのが相当である。


解説

 交通事故の受傷により,転居を余儀なくされたばあい,事故と相当因果関係のある範囲で,転居費用や家賃の差額が損害として認められています。

 本件は,7歳の女児が交通事故で四肢痙性麻痺等の後遺障害(後遺障害1級1号)を負い,バリアフリーの賃貸マンションへ転居したことから,その転居費用や家賃差額が損害として認められるかが問題となりました。

 本判決では,転居の必要性を認めながらも,転居前後で間取りや立地等の諸条件が異なることから,賃料差額全部を事故と相当因果関係のある損害とするのは困難だとし,平均余命の79歳まで月額3万円が賃料差額相当分の損害として認められました。

 そして,2回の転居費用のうち,2回目の転居は事故と相当因果関係のあるとまで認めるのは困難だとして,1回目の転居費用204,750円のみが損害として認められています。

 本件のように,転居の必要性が認められるとしても,転居前後で賃貸物件の諸条件が異なる場合には,賃料差額の一部のみが事故と相当因果関係のある損害として認定されることがあります。

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