慰謝料算定において、ツアー予選会に出場する機会を逸したという特別な事情が考慮された事例

大阪地判平成12年2月29日 (平成11年(ワ)第6495号)

争点

 ゴルフのトーナメントプロを志望するスポーツショップ勤務の者について,事故による頚椎捻挫等の傷害により,ツアー予選会に出場する機会を逃した事情が慰謝料において考慮されるかが争点となりました。

判決文抜粋


(3) 出場不能による慰謝料 二五万円
 原告◯は、ゴルフのトーナメントプロ志望であるところ、第一事故・第二事故に遭わなければ、ツアー予選会を勝ち進んでトーナメントプロになれたかどうかは定かではないものの、少なくとも本件事故のためにツアー予選会へ出場する機会を逸したことにかんがみると、この点に関する慰謝料は、二五万円とするのが相当である。


解説

 交通事故の慰謝料については,入通院慰謝料・後遺障害慰謝料とともに,実務では,「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称「赤い本」)」等の基準に従い,画一的に算定される傾向にあります。

 しかし,特別な事情があり,その事情の存在を立証することができれば,慰謝料増額事由として考慮される可能性があります。

 本判決では,ツアー予選会に参加する機会を逸したという特別な事情が慰謝料増額事由として考慮され,出場不能による慰謝料25万円が認定されました。

 他の裁判例をみると,長期入院により,結果として離婚せざるをえなくなった事情を考慮した事例(東京地判平成14年4月16日交通事故民事裁判例集35巻2号518頁)や,交通事故による受傷が原因で留年したことを考慮した事例(岡山地判平成2年9月28日交通事故民事裁判例集23巻5号1257頁)などがあります。

 このような個別の特別な事情については,過去に慰謝料増額事由として考慮された例があるからといって認められるとは限りません。

 裁判官の裁量の幅が大きい争点だと思われます。

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