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学生について、就労遅延による損害が認められた事例

2019.05.16

名古屋地判平成15年5月30日交通事故民事裁判例集36巻3号815頁

争点

 事故で留年することになったことによって生じた,就労遅延による損害が争点となりました。

判決文抜粋


5 逸失利益 262万0800円

(4)ア 平成12年度賃金センサス企業規模計・産業計・女性労働者大卒20歳から24歳の平均年収は302万0800円である。
 イ これに対し、原告は、本人尋問において、大学学部を卒業した者がヤマハの音楽教室に勤めるとすれば、1年目の収入は、1か月あたり15万円から20万円くらいである旨の供述をする。これは、大学学部でピアノ等の音楽を専攻した学生が音楽教室等にピアノ講師等として就職した場合に、1年目に得られる収入について一般的傾向を述べたものであると考えられる。しかし、上記のような卒業生は、音楽教室に勤務するとともに個人で教えたりすることがあること(原告本人)からすれば、上記の金額を超える収入を得ることも可能であると考えられる。
(5)ア これによれば、原告は、平成13年3月に大学学部を卒業していれば、1年目に少なくとも上記平均賃金に相当する302万0800円の収入を得る蓋然性が高かったと認められる。
 イ 一方、原告は、留年中の1年間は名古屋市で歯科医院のアルバイトをして、少なくとも40万円の収入を得ていた(原告本人)。これによれば、原告の逸失利益は、原告が留年中の1年間に卒業したら得られたであろう302万0800円から原告が現実に得た収入である40万円を控除した262万0800円であると認めるのが相当である。


解説

 学生が事故による受傷が原因で留年し,就職が遅れて収入を得ることができなくなった場合,就職すれば得られたはずの給与額が損害として認められています。

 就職が内定していて給与額が推定できるようであれば,内定企業の給与規定等にもとづいて算定することになると思われますが,そうでないときは,男女別の学歴・年齢別の平均賃金が参照されています。

 本件は,卒業試験を前に控えた音楽大学の4年生が事故に遭い,受傷の影響で卒業試験や追試験を受けることができずに留年したことから,卒業して就職できていれば得られたであろう収入(から実際に得た収入を損益相殺した額)が逸失利益として認められた事例です。

 就労遅延による損害の性質については,逸失利益ではなく,休業損害として認定した裁判例(名古屋地判平成28年4月27日自保ジャーナル1973号1頁)もあります。

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