特別室料(個室料など)
特別室料は,医師の指示があったときや,症状が重篤で個室等を利用したほうが治療面で良い効果が期待できるとか,そうしなければ病状が悪化するなどという理由があるか,一般の入院室に空きがなかったりなど,特別な事情がある場合に,相当な期間に限って認められています。
特別室を利用する必要性についての具体的な事情や相当な期間については,例えば,重篤な場合は,症状に関する医師の診断書・意見書等の資料を示したり,空きが無かった場合については,病院の報告書を示すなどして,主張・立証していくことになります。
通常の大部屋でも治療が可能である場合には,相当性が否定されるケースが多いと思われます。
したがって,単に一般の入院室が嫌なので個室に入りたい,個室の方が快適だから,というような理由では,特別室料は損害として認められていません。
また,当初は一般の入院室に空きがなかったために個室に入ったものの,後日空きができたにもかかわらず,そのまま個室で入院を続けたような場合には,一般の入院室が利用可能となった以降の期間については相当な期間に該当しないとして特別室料を損害として認めなかった裁判例があります。
このように,空きがなかったために個室を利用した場合には,当初任意保険会社が個室の利用を認めて病院への費用の一括払を行っていたとしても,後日争いになる可能性がありますので注意が必要です。
大阪地判平成18年7月31日(平成16年(ワ)第12461号)
個室使用代に関しては,甲14,弁論の全趣旨によれば,Aが個室を使用した理由は,平成15年3月26日から同月28日までについては大部屋が満床であったからであることが認められ,他方,それ以降の19日分については,大部屋が満床という状況は解消され,大部屋に入ろうと思えば入れたことが認められる。
以上からすると,大部屋が使用可能となって以降の19日分(18万0500円)については必要な治療費とは認められないから,これを177万1601円から控除し,残額159万1101円を必要かつ相当な治療費と認める。