事例のポイント
30代女性 / 看護師
入通院慰謝料が1.6倍,後遺障害逸失利益が2.6倍に増え,支払額が約3倍となる約1,462万円の増額に成功
入通院慰謝料 | 192 万円 | 1.6 倍 | 300 万円 |
休業損害 | 139 万円 | 1.0 倍 | 139 万円 |
後遺障害慰謝料 | 135 万円 | 3.1 倍 | 420 万円 |
後遺障害逸失利益 | 440 万円 | 2.6 倍 | 1,136 万円 |
治療費など | 266 万円 | 0.9 倍 | 233 万円 |
物的損害 | 0 万円 | → | 65 万円 |
過失相殺 | -234 万円 | -344 万円 | |
既払金 | -200 万円 | -200 万円 | |
裁判上の和解調整金 | 0 万円 | → | 451 万円 |
支払額 | 738 万円 | 3.0 倍 | 2,200 万円 |
過失相殺20% | 過失相殺15% |
取得金額
2200万円
受傷部位
足
後遺障害等級
併合11級(12級13号,12級相当(右下肢:「瘢痕を残すもの」)
当方:15 相手:85 道路:交差点
態様:こちらの車両が直進走行中に、相手方の車両が右折のため交差点に進入し、衝突した
担当弁護士の解説
【訴訟に至る経緯】
本件は,主に慰謝料のほか,後遺障害逸失利益と過失割合が争点になった事案です。
保険会社は,極めて低い入通院慰謝料・後遺障害慰謝料を提示したほか,12級の神経症状の後遺障害逸失利益についていわゆるむち打ちと同じ扱いで10年に満たないわずか8年の労働能力喪失期間で計算し,基本割合の過失割合での示談提示を行って来ました。
保険会社の示談提示に納得出来ない依頼者が当事務所に来所され,当職が保険会社の提示書面の内容を検討したところ,事故から6年も経過していることから,高額の遅延損害金の獲得が期待できると考え,交渉ではなく訴訟で解決を図ることとなりました。
【法律上の争点】
1 過失割合について
交通事故の実務においては,事故態様から過失割合を認定するために,別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(以下,「別冊判タ」といいます)が重要な資料として用いられています。
訴訟においても,別冊判タに記載されている事故類型であれば,その基準に沿って過失割合が認定されるのが一般的です。
本件事故は,別冊判例タイムズ38号の107図に該当するもので,過失の基本割合は,直進車20%(当方):右折車80%(相手方)でした。
これについて,当職は,相手方車両が,中央に寄らずに右折して原告車両の右前部に衝突していることを指摘し,早回り右折として5%の修正要素に該当することを主張したところ,和解案において当方15%:相手方85%の過失割合が認められました。
2 逸失利益について
本件の後遺障害の等級認定は併合11級ですが,このうち,12級相当の右下肢の瘢痕については,労働能力喪失に影響しないと考えられるため,12級13号の頑固な神経症状の影響による逸失利益が争点となりました。 この12級13号の等級に基づく労働能力喪失率,喪失年数については,自賠責の等級認定基準に従えば,労働能力喪失率14%,労働能力喪失期間は67歳まで認められる可能性があります。
保険会社は,示談書面において,むち打ちの神経症状の事例と同様に10年に満たないわずか8年の労働能力喪失期間で逸失利益を算定していましたが,当職が67歳までの労働能力喪失期間である37年間で算定した逸失利益を請求したところ,その主張が和解案において認められました。
3 裁判上の和解調整金について
交通事故の損害賠償において,示談交渉段階では遅延損害金は認められず,遅延損害金の獲得を目指そうとすれば訴訟手続きによる必要があるのがほとんどです 。
訴訟上の和解で解決する場合も,遅延損害金や弁護士費用相当額を考慮した調整金が上積みされるのが一般的です。
本件では,事故からの経過年限を考慮し,450万円を超える多額の調整金が和解案において認定されました。
【まとめ】
過失割合と労働能力喪失年数について全面的に当職の主張を認める和解案が裁判所から提示され,訴訟上の和解により解決を図ることが出来ました。
保険会社の示談提示は,労働能力喪失期間を8年として逸失利益を計算する極めて低額なものでしたが,訴訟で解決を図った結果,最終的に弁護士介入前の示談提示額の約3倍となる約1,462万円の増額に成功いたしました