支払額が1.9倍となる約121万円の増額に成功した事例

50代主夫男性
後遺障害等級
14級4号
傷病名
全身擦過傷,全身打撲傷,肋骨骨折
保険会社提示額
139 万円
最終獲得額
260万円

事例のポイント

50代 / 主夫

支払額が1.9倍となる約121万円の増額に成功した事例

ご相談内容

被害者 50代主夫男性
部位 背中,胸(主な箇所)
傷病名 全身擦過傷,全身打撲傷,肋骨骨折
後遺障害等級 14級4号
獲得金額 260万円

 本件は保険会社の初回の示談提示の後,弁護士委任となった案件です。

サポートの流れ

項目 サポート前 増額幅 サポート後
後遺障害等級 14級4号   14級4号
治療費 40 40
その他費用 7 7
休業損害 31 34(2.1倍) 65
入通院慰謝料 32 86(3.7倍) 118
後遺障害慰謝料 43 67(2.6倍) 110
後遺障害逸失利益 32 -32(0倍) 0
過失相殺(10%) 0 -34 -34
既払金 -46 -46
合計 139 121 260
単位:万円

取得金額

260万円

受傷部位

背中,胸(主な箇所)

後遺障害等級

14級4号

当方:10 相手:90 道路:駐車場の通路(スロープ)

態様:下り坂を自転車で走行して転倒していた当方と上り坂を走行していた四輪車が衝突

 保険会社の示談金の提示内容を確認したところ,自賠責基準で算定された非常に低い慰謝料の額であるだけでなく,主夫休業損害も低い額だったことから,裁判基準の慰謝料とともに,家事労働の支障についての報告書に基づいて休業損害を算定して請求いたしました。

解決内容

(1)過失相殺率について

 本件は,別冊判例タイムズ338図の基本割合である歩行者10%の過失相殺率が適用される事案です。

 しかし,保険会社は受任前の示談提示において過失相殺を主張していません。

 このように,保険会社が示談交渉において過失相殺を主張していない場合,大抵は自賠責保険基準に基づく非常に低い金額ですので注意が必要です。

 加害者が加害行為を否定していたり,被害者の過失が非常に大きな事案を除き,加害者が加入している任意保険会社が被害者に対し,自賠責保険金部分を含んで賠償金を支払い,後で自賠責保険金の支払いを受ける一括対応と呼ばれる手続きが取られていることがほとんどです。

 任意保険会社が実際に負担するのは,賠償金から自賠責保険金部分を除いた金額になります。

 そして,自賠責保険には重過失減額という制度があり,被害者の過失が7割未満であれば自賠責保険金は減額されません(詳しくは,「自賠責保険における重過失減額とはどのようなものですか?」を参照下さい)。

 そのため,保険会社は自賠責保険基準で賠償金を算定しつつ,過失相殺を行わない示談提示をすることがあります。

 過失相殺を行っていないので被害者にとって得な示談金を提示しているように見えますが,保険会社が過失相殺をしていないのは,自賠責保険の重過失減額の制度により,損をしないからに他なりません。

 裁判基準で慰謝料等を請求して交渉すれば,保険会社は当然のように過失相殺を主張してきます。

 本件でも,当職が裁判基準の慰謝料や兼業主婦の休業損害をしたところ,保険会社は10%の過失相殺を主張してきました。

(2)後遺障害逸失利益について

 本件では,背部擦過後の背部の瘢痕について,背部及び臀部の全面積の1/4程度の範囲に瘢痕を残すものとして後遺障害14級4号が認定されました。

 外貌醜状はそれ自体が身体的機能を左右するものではないため,労働能力喪失が争われることが多い後遺障害の類型の一つです。

 過去の裁判例については,醜状障害の具体的な内容・程度,被害者の性別,年齢,職業等を考慮した上で,以下のような取扱いを行っている傾向があると指摘されています(河邉義典裁判官の講演録,東京三弁護士会交通事故処理委員会「新しい交通賠償論の胎動-創立40周年記念公演を中心として」ぎょうせい2002 9頁など)。

1 醜状痕の存在のために配置転換を受けたり,職業選択の幅が狭められたりするなど労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれがある場合には一定割合の労働能力喪失を肯定して逸失利益を認める。

2 労働能力への直接的な影響は認めがたいが,対人関係や対外的な活動に消極的になるなどの形で,間接的に労働能力に影響を及ぼすおそれがある場合には,概ね100万~200万程度の額で慰謝料増額事由として考慮する。

3 直接的にも間接的にも労働能力に影響を与えないと考えられる場合には,慰謝料も基準どおりとして増額しない。

 本件の外貌醜状は衣服によって隠れる程度の背部の瘢痕であり,被害者の職業の性質に照らして考えるとおよそ逸失利益が認められない事案でした。

 これに対し,保険会社は受任前の提示で後遺障害逸失利益を認定していますが,それは後遺障害慰謝料と逸失利益の合計額を自賠責保険の後遺障害14級の上限支払額75万円にあわせるためです。

 保険会社は,当職が自賠責基準を超える賠償金を請求した時点で逸失利益を否認しています。

所感(担当弁護士より)

 保険会社は当初自賠責保険基準で入通院慰謝料及び後遺障害慰謝料を算定し,休業損害についても低い金額を提示していました。

 これに対し,弁護士が粘り強く交渉したところ,入通院慰謝料が3.7倍,後遺障害部分が1.5倍,休業損害2.1倍になる,支払額が1.9倍となる約121万円の増額に成功いたしました。

その他の解決事例