事例のポイント
70代女性
入通院慰謝料、休業損害、逸失利益の大きな増額により、2.3倍の増額に成功した事例
被害者 | 70代女性 |
---|---|
部位 | 首 |
傷病名 | 頚椎捻挫 |
後遺障害等級 | 14級9号 |
獲得金額 | 370万円 |
サポートの流れ
項目 | サポート前 | サポート後 | 増額幅 |
---|---|---|---|
後遺障害等級 | 14級9号 | 14級9号 | – |
入通院慰謝料 | 70 | 139.5 | 69.5 |
休業損害 | 43.9 | 80.5 | 36.6 |
逸失利益 | 11.7 | 82.1 | 70.4 |
後遺障害慰謝料 | 75 | 110 | 35 |
治療費等 | 24.3 | 24.3 | 0 |
入院書雑費 | 2.2 | 3 | 0.8 |
既払い金 | -69.4 | -69.4 | 0 |
合計 | 157.7 | 370 | 212.3 |
単位:万円 |
取得金額
370万円
受傷部位
首
後遺障害等級
14級9号
当方:0 相手:100
本件は自転車事故対歩行者の事故で,保険会社の後遺障害認定サポートを用いて後遺障害等級が認定された事例です。
自賠責保険が無い自転車事故の場合であっても,加害者が任意保険に加入していれば,任意保険会社から自賠責の調査事務所に依頼し,自賠責保険がある場合と同様の基準で後遺障害の等級認定を受けることができる場合があります。
本件の後遺障害の等級認定は任意保険会社のサービスで行われたもので,異議申立て(再審査請求)を受けてもらうことができず,認定等級に不服がある場合,訴訟で争うしか方法がありませんでした。
本件については,訴訟で長期化することを避けたいという依頼者の意向があり,認定等級をもとに示談交渉を進めることになりました。
解決内容
保険会社は,依頼者に対し,社内基準に基づいた入通院慰謝料や自賠責基準の後遺障害慰謝料,パートの収入額を基礎に計算した休業損害や逸失利益など,非常に低い賠償額を提示していました。
弁護士介入後は,まず,裁判基準の入通院慰謝料及び後遺障害慰謝料を請求しました。
そして,一般に,パート等の実収入があっても,家事に従事しており(ただし,他人のためにする家事である必要があります),かつ実収入が女性全年齢平均賃金を下回る場合には,兼業主婦として主婦休業損害が認められていますが,本件では依頼者が長男と同居して家事の一切を担っていたという事情に着目し,兼業主婦の休業損害や逸失利益を主張いたしました。
当職が主婦休業損害や逸失利益を主張した後,高齢の家事従事者の基礎収入額が争点となりました。
高齢の家事従事者については,裁判上,年齢別の女性全年齢平均賃金や平均賃金から一定割合減額した額を基礎収入として主婦休業損害や逸失利益が算定されることが少なくありません。
保険会社は,当初年齢別の女性平均賃金の50%を基礎収入として主張していましたが,当職が本件と同様の家族構成の高齢者について女性全年齢平均賃金を基礎収入として休業損害や逸失利益を認定した先例(東京高判平成28年11月17日自保ジャーナル 1990号1頁)を示して粘り強く交渉したところ,女性全年齢平均賃金を基礎収入として認定してもらうことまではできませんでしたが,年齢別の女性平均賃金を基礎収入とし,労働能力喪失年数を7年として逸失利益を認定してもらうことができました。
大阪地裁の基準において,14級9号の軽度の神経症状(むち打ち症)の労働能力喪失年数の一応の目安が3年から5年とされていますので(交通事故損害賠償額算定のしおり 20訂版),保険会社は女性全年齢平均賃金を基礎収入とする代わりに,例外的に通常よりも長い労働能力喪失年数を認定することで譲歩したものと考えられます。
所感(担当弁護士より)
高齢の兼業主婦について,年齢別の女性平均賃金の50%という保険会社の基礎収入に関する主張を撤回させたほか,労働能力喪失年数を7年として逸失利益を認定するという譲歩を引き出せたことにより,女性全年齢平均賃金を基礎収入として休業損害や逸失利益を算定した場合に近い成果は得られたと思います。