後遺障害の併合・相当・加重に関する基礎知識

 交通事故によって受けた傷害の症状が治療しても元通りに回復しない場合、後遺障害として慰謝料と逸失利益(障害がなければ得られたであろう利益)を請求することになります。

 後遺障害が残った体の部位が2か所以上だったり、以前の事故で同じ箇所に既に後遺症があったりした場合の取り扱いはどうなるのでしょうか。

 後遺障害が残った箇所が2か所以上の場合、「併合」と呼ばれる取り扱いがなされます。

 自賠法施行令別表に記載されていない後遺障害は、最も似ている等級として取り扱います(このことを「相当」といいます)。

 以前の事故と同じ箇所に後遺症が残った場合、障害の程度が重くなった分だけ損害賠償を受けることができます(このことを「加重」といいます)。

 ここでは、「併合」「相当」「加重」に関する基礎知識を、わかりやすく解説します。

部位と系列

 後遺障害の等級を認定する基準では、身体を10種類の「部位」に分類し、さらにその部位を機能ごとに分類しています。
 最終的には後遺障害を、以下の35の系列に分類しています。

障害系列表 
部位 器質的障害  機能的障害 系列
眼 眼球(両眼) – 視力障害
調節機能障害
運動障害
視野障害
1
2
3
4
まぶた 右 欠損障害 運動障害 5
左 欠損障害 運動障害 6
耳 内耳等(両耳) - 聴力障害 7
耳かく(耳介) 右 欠損障害 - 8
左 欠損障害 - 9
鼻 欠損及び機能障害 10
口 - そしゃく及び言語機能障害 11
歯牙障害 - 12
神経系統の機能または精神 神経系統の機能又は精神の障害 13
頭部、顔面、頸部 醜状障害 - 14
胸腹部臓器(外生殖器を含む) 胸腹部臓器の障害 15
体幹 せき柱 変形障害 運動障害 16
その他の体幹骨 変形障害
(鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨)
変形障害 17
上肢 上肢 右 欠損障害 機能障害 18
変形障害(上腕骨又は前腕骨) - 19
醜状障害 - 20
左 欠損障害 機能障害 21
変形障害(上腕骨又は前腕骨) - 22
醜状障害 - 23
手指 右 欠損障害 機能障害 24
左 欠損障害 機能障害 25
下肢 下肢 右 欠損障害 機能障害 26
変形障害(大腿骨又は下腿骨) - 27
短縮障害 - 28
醜状障害 - 29
左 欠損障害 機能障害 30
変形障害(大腿骨又は下腿骨) - 31
短縮障害 - 32
醜状障害 - 33
足指 右 欠損障害 機能障害 34
左 欠損障害 機能障害 35

引用:労災補償障害認定必携より

併合

 併合とは、系列が異なる複数の後遺障害が残った場合、その複数の後遺障害が合わさったとして最終的に一つの後遺障害等級に認定する取り扱いです。

原則

  • ①重い方の後遺障害で等級を認定します
     例:一つの目の視力が0.6以下(13級1号)と3本以上の歯に歯科補綴(14級3号)
       ~13級で認定
  • ②13級以上の後遺障害が複数ある場合、重い方の後遺障害等級を1級繰り上げます
     例:一つの目の視力が0.06以下(9級2号)と7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの   (12級3号)
       ~8級で認定
  • ③8級以上の後遺障害が複数ある場合、重い方の後遺障害等級を2級繰り上げます
     例:両眼の視力が0.1以下(6級1号)と一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル    以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの(7級3号)
       ~4級で認定
  •  

  • ④5級以上の後遺障害が複数ある場合、重い方の後遺障害等級を3級繰り上げます
     例:両眼の視力が0.06以下になったもの(4級1号)と両耳の聴力を全く失ったもの   (4級3号)
       ~1級で認定

例外(みなし系列)

 異なる系列であっても、以下の場合は同じ系列とみなします(併合をしません)。

  • 両眼球の視力障害、調節機能障害、運動障害、視野障害の各相互間
  • 同一上肢の機能障害と手指の欠損又は機能障害
  • 同一下肢の機能障害と足指の欠損又は機能障害

例外(組み合わせ)

 系列も部位も異なる後遺障害は原則に従えば併合することになりますが、以下の例など、あらかじめ組み合わせとして等級が設定されている場合は、その組み合わせ等級で認定します(併合をしません)。

  • 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
  • 両手の手指の全部の用を廃したもの
  • 両眼のまぶたに著しい欠損が残ったもの
  • 両下肢の用を全廃したもの
  • 両足をリスフラン関節以上で失ったもの

例外(序列を乱す場合)

 原則に従って等級を繰り上げた場合、もっと重い後遺障害を追い越すようなケースがあります。この場合、もっと重い後遺障害の1級下で認定されます。

例:左足を膝関節以上で失い(4級5号)、右足も用を全廃(使えなくなること:5級7号)の場合、上記④のケースとなり重い方の等級を3級繰り上げ1級となります。
しかし、もともと1級には両足を膝関節以上で失った場合(1級5号)と、両足の用を全廃したもの(1級6号)が定められています。

 事例のケースでは1級のどちらよりも軽いと考えられるので、2級と認定されます。

相当

 相当とは、後遺障害認定の根拠である等級表に該当しないケースでも、その後遺障害の程度に応じて一番似ている等級で認定することをいいます。

例:嗅覚喪失や味覚脱失は「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12級で認定します。 同じく嗅覚減退や味覚減退は「局部に神経症状を残すもの」として14級で認定します。

加重

 今回の事故前に既に後遺障害があり、今回の事故で同系列の後遺障害が残った場合、重くなった程度に限り損害賠償が受けられます。  以前の後遺障害の理由が事故によるものか先天性によるものかは問いません。

例:以前の事故でむち打ち(頸椎捻挫)により14級9号が認定され、今回の事故で更にむち打ちとなり画像所見も認められ12級13号が認められた場合、今回支払われる保険金は下記の通りです。

重くなった程度=12級13号の保険金(224万円)-14級9号の保険金(75万円)=149万円

まとめ

 後遺障害が複数残ったり、以前からの後遺障害の延長線上であったりするケースでは、特別な取り扱いがされますが、その内容を理解することは簡単ではありません。  交通事故問題に数多く取り組んでいる弁護士であれば、豊富な経験から後遺障害の併合・相当・加重のケースでも適切な等級認定のサポートにより、最大限の示談金獲得が期待できます。  どうぞ遠慮なく、お気軽にご相談ください。

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